異海漂流日記~現世でも海上生活していた俺が、異界の海で漂流したら~
「キャラクター生成道場」第三段!
船越健吾 編
魅力的なキャラを作ることを目的にした練習短編です。
ストーリーはここで終わります。
船越健吾というキャラの造詣を楽しんでいただければ幸いです。
一日の大半を船の上で過ごす。
半地下の部分が居住スペースになってる小型漁船だから、そこに小さな寝袋を持ち込んでソファーの上で寝ている。
キャンピングカーにつけるようなバッテリーで電力も太陽光で賄えるから問題ない。
飯はその日釣った魚数匹と白米、スーパーで買ったキャベツに醤油だけで十分だった。
トイレは船に付いてるから、市場や漁業組合に顔を出すときと、食材補給以外は陸に上がることすらなくない。
そんなある日、船の中で寝ていると潮風が小窓を叩く音が聞こえた。
船自体もだんだんと動いているのがわかる。
錨を下ろしたはずだがと頭を捻るが、ひとまずは起きて外に出た。
長年海にいると、それなりに不思議なことも起きるもんだ。
錨は姿かたちが無くなっており、船も沖合まで流されている。
嫌な予感に急いで操舵室に入り、エンジンを入れるために鍵を回すが何も起きない。
雷が海の真ん中に落ち、耳を劈くような轟音と、窓が発光しているのかと思えるような強烈な光が俺の感覚を消し飛ばした。
最後の一瞬、暗転した視界の隙間から魚の鱗が見えた。
*
1976年の11月、四国の沿岸沿いの街で俺、船越健吾は長男として生まれた。
お袋が言うには、小さいころは風邪をしょっちゅう引いていたらしい。
だが、特に大きな病気や怪我に見舞われなかったことを考えると、まぁまぁ幸運な生まれだったんだろう。
親父もお袋も真面目な性質ではあったが、取り立てて突出した所もなかったし、逆に一際汚点があるわけでもなかった。
そんな両親のもとで育った俺は、真面目な小学生時代を過ごした。
中学を卒業する頃にはバブル景気も弾けたせいもあって、手に職つけて漁師一本でやってきた親父の後を継ぐことに疑問も抱かなかった。
港町にも夜逃げした一家の空き家を背に、調子はずれに威張る成金趣味の人を見たときは、親父が実直に稼いでいる姿を尊敬した。
すぐに漁師を継ぐつもりだったが、俺の頭の出来が良かったもんだから親父に高校は行っとけと言われ、俺は地元でもそこそこの高校に入ることになった。
周囲が浮いた話で盛り上がる中、俺はただひたすらに勉学に励んだ。
がり勉というあだ名でも、弱者のレッテルを張られていじめとかに合わなかったのは、俺の腕っぷしの強さと、少しだけ高い身長のおかげだったと思う。
当時流行っていたカラーギャングや徒党を組んだ暴走族もいたにはいたが、俺が絡まれることはなかった。
まぁ、夜に出歩くとかすらしなかったから出くわさなかったってのはあるが・・・
順調に高校まで卒業した俺は親父の後を継いで漁師になった。
親父と同じ船に乗り、漁の仕方や、波や風、天気の読み方なんかを教わった。
反抗期すら無かった俺は親父との関係も良好だった。
それが変わったのは、俺が二十歳を過ぎたばかりの頃、お袋が死んだときだ。
見合いを、結婚をって張り切ってた矢先、癌で呆気なく死んだ。
その頃から、親父が漁にも出なくなった。
いや、正確には船には乗るが仕事のいっさいを俺に任せるようになった。
一人で空の酒瓶を抱えて潮を眺めてばかりの親父を見ても、俺は何も言わなかった。
たぶん悲しんだろうとは思ってたから。
そんなある日、親父が珍しくまだ開けていない日本酒を抱えて船に乗ってきた。
中身のつまった瓶の重さで、船が大きく揺れたのを俺は今も覚えてる。
空は微かに雲がかかっていたが、風もなく、波も穏やかな日だった。
船を出すと、親父はすぐにラッパ飲みで酒を飲み、涙を流しては吐くことを繰り返した。
「なぁ、親父。体に触るぜ」
船を定点で止めて、俺がそう言ったときだった。
親父の顔が海の色と混じって一瞬で黒くなったように感じた。
「お前はいいよな。母さんが死んでも苦しくないんだから」
目の奥が熱くなったのと同時に、まるで映画館で古い白黒映画を見ている感覚になった。
俺だって悲しかった。
けど、苦しかったかと聞かれたらわかんなかった。
だって人は死ぬもんだろ。
それに、社会がどうあれ自分のできることをしてきた親父たちを見て俺は育ったんだ。
悲しかろうが、それでも今生きてる俺たちは、生き続けるしかないって。
そう言ってやりたくて、でも俺の口は別の言葉を吐いていた。
「親父が羨ましいよ。酒に逃げられるくらいの苦しみしか感じないなんてな」
自分の言葉を耳で聞いた俺は、てっきり親父が殴りかかってくると思ってた。
けど、親父はなぜか笑って言った。
雲の隙間から刺す太陽がちょうど親父の顔を照らしていた。
「ああ、そうかもな」
それっきり俺と親父の間では会話は無くなった。
お袋が話をつけていた所からお見合いの申し出があったけど、俺が断った。
家族って枠組みが錨のように思えた。
海に深く沈みこんで、船の身動きを封じる枷に見えた。
お金を溜めて俺は自分の船を買った。
家も出て、それからはずっと一人で漁をしている。
そんな親父ももういない。
酒浸りの生活が祟ったのか、俺が三十になる前には死んだ。
漁業組合の役員の人が知らせてくれて知ったから、俺は死に目にもあっていない。
別に悲しくはなかった。
ただ、俺はそれから賃貸を解約し、海の上で過ごすようになった。
読んでいただきありがとうございました。
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