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ヒトナキ街で、きみは微笑んだ  作者: 4MB!T
最終章「記録なき時間のなかで」
57/72

15-1.「書かないページと、なにも語らない空」

 風景があった。

 それはどこかの都市の残骸でも、構造物の輪郭でもない。

 ただ、ひらけた空と、淡い地面と、乾いた空気。


 ふたりは、そこに座っていた。

 なにかを待っていたわけではない。

 ただ、記録を手放した手で、いまは何も持たないでいることを選んでいた。




 ナユタが、ひとつ深呼吸する。

 音のない空気が、肺の奥までゆっくりと入り込んでくる。


「……ねえ、ミナ」

「はい」

「この場所、ぼく、記録に残さないって決めたよ」


 ミナは振り返らない。

 ただ、短く応じる。


「理由はありますか?」


「……ううん。なんにもないんだ。

 でもね、“なにもない”って感じるのが、すごくすごく大事なことな気がして」




 ナユタは、ポケットから手帳を取り出した。

 前のページには、輪のこと、旅のこと、誰かのことが書かれている。

 でもいま開いたそのページには、ただ白いままの余白が広がっていた。




「このページは、書かないままにしておきたいな。

 “なにも書かなかった時間”っていう記録が、あってもいい気がするんだ」


 ミナは、それを肯定するかのように静かに瞬きをした。




 彼らの目の前に広がる空は、誰のデータにも接続されていない。

 この場所の緯度も、時間も、名もない。

 けれどその無名の風景が、ふたりの中にはしっかりと“過ごした時間”として刻まれていった。




 記録は、残さなかった。

 だからこそ――その景色は、ふたりだけのものだった。

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