表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒトナキ街で、きみは微笑んだ  作者: 4MB!T
1章「記録と名のない少年」
17/72

5-1.「無人の診療所」

 都市第5医療帯。

 ナユタとミナは、かつて一次救護の拠点とされていた廃施設に足を踏み入れていた。


 ガラス張りのエントランスは割れ、通路には乱れた担架と点滴スタンドが散乱していた。

 壁には標語が残っている。


 『安心と回復を、すべての市民に』


 標語の下には、誰かの手で赤線が引かれていた。

 その痕跡はスプレーでもなく、血液でもなかった。

 乾いた何かで書かれた、かすれた色のまま残っていた。


「医療帯記録、最終更新は21年前。以後、封鎖処理」

 ミナは端末に目を落としながら言った。

「この区画にアクセス記録はありません。登録上は“無施錠休止帯”です」


 ナユタはゆっくりと施設内を歩いた。

 診察室は空だった。

 医療用のベッドには誰も寝ておらず、機器の多くは起動しないまま朽ちていた。


 だが、ふと、通路の奥から音が聞こえた。


 カリ、キィ……カチャ。


 一定の間隔で繰り返される、金属の引っかきと器具の動作音。

 ナユタはそちらに顔を向けた。


 音は、処置室の扉の向こうから聞こえていた。

 その扉はわずかに開いており、内側で照明が点滅している。


「誰か……いる?」


 ナユタの声は、ごく小さかった。

 けれど、その音に合わせて、扉の隙間からさらに一度、器具の音が返ってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ