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孤島の愛と約束

作者: 鍼野ひびき

「墜落」

南国の青い空を飛ぶはずだった旅客機は、突然の嵐に襲われた。航平と美咲は、大学を卒業したばかりの恋人同士。待ちに待った卒業旅行のはずが、飛行機は真っ二つに割れ、海に叩きつけられた。

航平は激しい揺れと轟音の中で意識を失った。気がついたときには、全身が痛む。見知らぬ天井が視界に入ってくる。ゆっくりと起き上がると、そこは飛行機の残骸だった。シートベルトが切れていないため、奇跡的に助かったらしい。

辺りを見渡すと、美咲の姿が見えない。焦りと不安が押し寄せる。大声で美咲の名前を呼ぶが、返事はない。航平は必死に飛行機の残骸を這い回り、ようやく美咲を見つけた。彼女は航平と同じようにシートベルトに繋がれたまま、意識を失っていた。

航平は必死に美咲のシートベルトを外そうとする。しかし、激しい衝撃で機体が歪んでおり、シートベルトは固く締め付けられている。焦りと恐怖が押し寄せる中、必死に力を込めてシートベルトのバックルを外そうとする。

ようやくシートベルトを外すことができ、美咲を抱き起こした。彼女の顔は青白く、呼吸も浅い。航平は必死に美咲の頬を叩き、声をかけ続ける。すると、美咲の目がゆっくりと開いた。

「美咲、大丈夫か?」

美咲はぼんやりとした目で航平を見つめ、うめき声を上げた。

「痛い…どこにいるの?」

「わからない…飛行機が落ちたんだと思う」

美咲は航平の腕の中で震え始めた。恐怖と不安が彼女を襲っていた。航平は美咲を抱きしめ、優しく声をかけた。

「大丈夫、俺がいるから。必ず助ける」

航平は美咲を抱きしめながら、周りを見渡した。飛行機の残骸は大きく損傷しており、脱出できるような出口は見当たらない。機内は暗く、外の状況もわからない。

「美咲、外の様子を見てくる」

航平はそう言うと、慎重に飛行機の残骸を這い始めた。機体の損傷が激しく、足元は不安定だ。何度も転びそうになりながら、ようやく機体の外に出ることができた。

外は真っ暗だった。嵐は収まったようだが、波は高く、激しい音を立てて打ち寄せている。飛行機は海岸近くに墜落したようだ。しかし、ここからどうやって脱出するのか。航平は絶望的な気持ちになった。

航平は再び機内に戻り、美咲に状況を説明した。二人は互いに体を寄せ合い、恐怖に耐えた。

夜が明けると、二人はなんとか飛行機の残骸から這い出し、周りを見渡した。そこは鬱蒼としたジャングルが広がっていた。鳥の鳴き声と波の音が響く。見渡す限り、文明の痕跡は何もない。二人は無人島に漂着したのだと悟る。

リュックの中身は、非常食の缶詰が数個と、航平の着替えだけだった。美咲の小さなポーチには、リップクリームと数枚のティッシュが入っていた。絶望的な状況に、二人は顔を見合わせる。

「新生活」

数日後、二人はなんとか洞窟を見つけた。雨風をしのげる場所だ。食料は、島に生えている木の実や魚を捕って食べる。水は、木の根元から染み出るものを集める。傷ついた身体は次第に回復し、過酷な環境に慣れてきた。

しかし、精神的な疲労は蓄積されていった。いつ助けが来るのか、それともこのまま島に取り残されるのか。不安と絶望が二人を襲う。それでも、互いに支え合いながら、生き抜こうと決意する。

ある日、美咲が倒れた。熱がある。航平は必死に薬草を探し、美咲の世話をした。数日後、美咲は回復した。危機を乗り越えたことで、二人は絆を深めていった。

ある夜、洞窟の中で、二人は静かに見つめ合った。航平は美咲の髪を優しく撫で、美咲は航平の腕に顔を埋めた。互いの呼吸が重なり合い、静寂の中で鼓動だけが響く。

美咲の体が震え始めた。航平はそれに気づき、そっと美咲を抱きしめた。美咲は航平の胸に顔をうずめ、涙を流した。航平は優しく美咲の背中を撫で、静かに語りかける。

「大丈夫、俺がいる。何も心配するな」

美咲は航平の腕の中で、少しずつ落ち着きを取り戻していく。二人は互いの体温を感じながら、静かに眠りについた。

翌朝、二人は穏やかな表情で目を覚ました。美咲は航平の腕の中で微笑み、航平は優しく美咲の髪を撫でた。

「おはよう」

「おはよう」

二人は静かにキスを交わした。それは、過酷な環境の中で生まれた、かけがえのない瞬間だった。

その後も夜になると、二人は洞窟の中で抱き合い、体を重ね温め合った。やがて、二人の関係は恋人以上の者へと発展していく。そして、美咲の妊娠が発覚する。

喜びと不安が入り混じる中、この過酷な環境で子供を産むこと、そして育てること。それは想像を絶する困難があった。それでも、二人は希望を捨てなかった。

「新たな命」

美咲の妊娠は、過酷な無人島での生活に新たな希望をもたらした。航平は、お腹が大きくなる美咲を支えながら、食料集めや洞窟の整備に励んだ。

ある朝、美咲が突然の腹痛を訴えた。航平は慌てて美咲を支え、出産の準備をする。しかし、島には医療設備も何もない。航平は必死に美咲を励まし、冷静さを保とうとした。

激しい陣痛の中、美咲は航平の手を握りしめた。航平は美咲の額にキスをし、「大丈夫、必ず乗り越える」と囁いた。

長い時間が過ぎた後、ついに小さな泣き声が聞こえた。航平は震える手で赤ちゃんを受け取った。それは、小さな女の子だった。

航平は娘を抱きしめ、涙を流した。美咲も安堵の表情で娘を見つめた。二人は、この過酷な島で生まれた小さな命に、希望を見出した。

航平は娘に「陽菜」と名付けた。太陽のように明るく、強く育ってほしいという願いを込めて。

陽菜はすくすくと成長していった。航平と美咲は、娘のために島を探検し、食料を集めた。陽菜は好奇心旺盛で、いつも笑顔を見せていた。

ある日、航平は島を探索中に、不思議な光に気づいた。光に導かれるように進むと、そこには小さな滝があった。滝壺には、淡い光を放つ石が沈んでいた。

航平は石を拾い上げると、石は彼の手に吸い込まれていった。すると、彼の頭の中に、不思議な知識が流れ込んできた。それは、この島で生き抜くための知識だった。

航平は、石の力を使い、島で食料を栽培する方法を編み出した。また、美咲と陽菜の健康管理のための薬草も作り出した。

家族は、石の力のおかげで、より豊かな生活を送ることができるようになった。陽菜は、島で自由に走り回り、動物たちと戯れた。

時は流れ、陽菜も成長し、少女になった。彼女は好奇心旺盛で、島のことを何でも知りたがった。航平と美咲は、娘の成長を喜びながら、島のことを教えた。

ある日、陽菜が浜辺で不思議な貝殻を見つけた。貝殻の中には、小さな紙切れが入っていた。そこには、SOSの文字が書かれていた。

陽菜は興奮して航平と美咲に貝殻を見せた。これは、助けを求めるメッセージだと確信した。

「救援」

陽菜は興奮して航平と美咲に貝殻を見せた。これは、助けを求めるメッセージだと確信した。

航平は貝殻を手に取り、真剣な表情になった。もしこれが本当にSOSのメッセージなら、それは希望の光だ。しかし、同時に危険も伴う。助けが来るまで、島を出ることはできない。

家族は話し合い、しばらく様子を見ることにした。そして、メッセージの内容をより明確にするために、浜辺に大きなSOSの文字を書くことにした。

数日後、島の沖合に船が現れた。航平は陽菜と美咲を抱きしめ、涙を流した。ついに、救助が来たのだ。

船は島に近づき、数人の乗組員が上陸してきた。彼らは家族に食料と水を渡し、島の状況を確認した。

乗組員によると、この島は航路から外れており、滅多に船が通らない場所だった。陽菜が拾った貝殻は、おそらく何年も前に漂着したもので、偶然家族が発見したのだという。

家族は乗組員に感謝し、島での生活について話した。乗組員たちは家族のたくましさに驚くとともに、無事に救出できたことを喜んだ。

翌日、家族は船に乗り込んだ。島での生活は終わりを告げ、新たな人生が始まる。航平、美咲、陽菜は、互いに手を握りしめ、希望に満ちた未来を見つめた。

航平は、島で得た知識と経験を活かし、新たな人生を切り開こうと決意した。美咲は、航平と陽菜を支えながら、幸せな家庭を築いていくことを誓った。陽菜は、島での冒険を忘れずに、好奇心旺盛な少女として成長していくことだろう。

家族は、無人島での過酷な生活を乗り越え、かけがえのない絆を深めた。それは、一生忘れられない宝物となった。


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