ししのねがい
ひとりのししがおりました
いつか空へと駆け上がることを
夢見ておりました
ひとりのししはおもいます
長い長い坂道を駆け上がったら
あの空へ昇っていける気がすると
そうしてししは坂道を
造っては駆け造っては駆け
空を目指して行きました
けれども坂はいつの日か
ボロボロ崩れてしまいます
支える柱の限界を越えてしまえば崩れます
そもそも空へ昇るのは
地上を駆けるししの身で
出来ることではないのだと
なれるものではないのだと
考えるまでもないのです
空を目指して坂あがり
大地から身を遠ざけて
宙ぶらりんな状態で
駆けていられるはずがない
だから地上を駆けるのです
ししはのんびり日々を過ごし
お腹が空けばえものを追い
満ちて再び寝に戻る
それがししの本当のねがいであると
知っています
今を楽しむことこそがししのねがいと
知っています
ししは空へと駆け上がることを夢見ず
目の前のえもの追うこと楽しみます
そうして日々は過ぎて行き
気づけば地上は山になり
ししは空へと近づきます
そこから見える風景は
空を感じるものでした
そして最期は星になり
空に昇っていきました