幸せな一週間
お休みのヴァングラスと過ごした一週間のお話です。
あの日からそれはそれは幸せな一週間を私は過ごしている。
まず朝になるとヴァングラスが私の部屋に来て一緒に朝食を摂る。
本当は食事室で食べるのだが、ヴァングラスは広い部屋で一人で食べても味気ないと、普段から自分の部屋でチャチャッと食事を摂っていたそうだ。
今は私と二人だが部屋の方がお互い気楽なので私の部屋で食べている。
そして怪我の痛みもなくなったので、私は椅子に座って食べるようになった。
というのも、私もヴァングラスにアーンをしたかったからだ。
しかし、お膝抱っこだとどうしても難しい。
まずスープはこぼしそうだし、他の料理も近すぎてやりづらい。
そのうえ、ヴァングラスも私にアーンをするのを譲らないので二人でベストポジションをいろいろ探った。
そして見つけたベストポジションはテーブルの角だった。
角を挟むように並んで座るのだ。
そうするとヴァングラスの顔がよく見えるし、距離もアーンするのに遠すぎず近すぎず、やりやすいのだ。
「ヴァン様、アーンしてくださいませ」
ヴァングラスがパクリと食べ、次に彼が私にスプーンを差し出し、私もパクリとする。
二人でモグモグ食べてニコリとした。
日々の成果かお互いのタイミングがバッチリ合ってきたのを感じる今日この頃だ。
朝食の後は一階の執務室にヴァングラスにお姫様抱っこされて行く。
どうやらヴァングラスはいたくお姫様抱っこを気に入っていたようだ。
怪我がもうすっかり治ったので歩くと言ったら、どうしても?と捨てられた子犬のような目をして聞くのだ。
でも私もずっとお姫様抱っこでは体重が増える一方だから譲れない。
ヴァングラスとお互い納得いくまで相談した。
その結果、午前中の移動はお姫様抱っこ、午後は手を繋いで歩こうという事に決まった。
くっつきたいのは私も一緒だしね。
執務室ではヴァングラスが当主としての書類やお手紙の確認をする。
私もヴァングラスの机の隣に私用の机を付けて執事のダウズから王都のお屋敷の差配の帳簿や書類を教えてもらう。
と言っても本当だったら卒業したらすぐに公爵夫人になってしまう予定だったから、ひと通りの事は習っているので、細かい部分を聞くような感じだ。
ダウズは褒め上手でいつも素晴らしいです!バッチリでございます!と褒めてくれる。
私の方は少しずつ引き継いでいっているので、空いた時間に家族やルル、パトリシアにお手紙を書いたりしている。
もちろん、お父さまにヴァングラスからプロポーズをされてそれを受けた事は次の日にはお手紙に書いた。
ヴァングラスに聞いたのだが、なんと初めてデートした日にはお父さまに私との婚姻を願い出ていたらしい。
でも、私には内緒にして欲しいと、私の気持ちを優先して欲しいと言ってくれていたそうなのだ。
そんなに早くからとびっくりしたのと、私の気持ちを大切にしてくれたヴァングラスを改めて好きだなと思ったのだった。
お父さまからは喜びのお返事が、リクトからも祝福のお手紙が届いた。
お母さまからは怪我をとても心配するお手紙が届いたので、もう平気だと返事を出した。
婚姻の日取りや発表については、お父さまが4日後に領地から戻ってから決める事になっている。
ヴァングラスの方も当主をヒューゴに譲る書類を王城に出したが承諾書が届くのにもう少しかかりそうだ。
ルルは脅威の回復力を見せているらしく、お父さまが領地から帰ってくる日に合わせて復帰する予定だ。
パトリシアにだけ、私が攫われそうになって怪我をしたけどもう大丈夫な事、プロポーズを受けた事を知らせた。
パトリシアからは大興奮のお祝いのお手紙がすぐに届いた。
「こっちはいち段落したけどミリーの方はどうかな?」
「私の方も大丈夫です」
「そろそろお昼にしようか」
「はい」
私はヴァングラスが抱き上げやすいように両手を上げる。
そうしてヴァングラスにお姫様抱っこで抱えられ部屋に戻るのだった。
お昼を食べた後はそのまま部屋でのんびり過ごす。
今日は読書だが、二人でカードゲームをしたりチェスを楽しむ日もある。
ヴァングラスのお気に入りの本は兵法の本だ。
難しそうな本だが、ヴァングラスにとってはとても楽しいらしい。
私も少し読んだがチンプンカンプンだった。
私は別の本を読む。
いろいろな本がトルード邸には揃っていて、今読んでいる本はローラのお勧めの本だ。
なかなか甘々な恋愛本で面白いのだ。
二人でソファに座ってヴァングラスの体に凭れながら読んでいると何とも幸せな気分になる。
多分、この甘々な本の二人に負けていないような気がする。
お茶は毎日私の夢のお庭の東屋でいただいている。
ヴァングラスと手を繋いでのんびり歩く。
一週間前よりも少しずつ黄色花の種類が増えている。
そしてトムが遊び心を出して、隠れ妖精や小人の陶器のお人形を置き始めた。
ヴァングラスと新しく増えた花や妖精や小人の陶器のお人形を見つけるのを楽しんでいる。
東屋ではヴァングラスのお膝に抱っこでお茶とデザートをいただく。
二人とも、やっぱりお膝抱っこができないのは寂しいねってなったのだ。
デザートならこの距離でもアーンができて大丈夫だ。
最近はシェフがアーンしやすいデザートに工夫してくれるようになった。
食べ終わってもしばらく花を眺めて胸にくっついている。
トクリトクリと鳴るヴァングラスの鼓動が愛おしい。
ヴァングラスが優しく頭を撫でてくれるのが気持ちが良い。
だから、たまにウトウト寝てしまう。
お返しに私がヴァングラスに膝枕をして頭を撫でることもある。
彼の髪は短いがサラサラしていて触り心地が良い。
ヴァングラスも私の膝でウトウト寝てしまう時もある。
その寝顔は何だか可愛らしくて大好きだ。
お茶の後はヴァングラスは鍛錬場で護衛たちと体を動かす。
ここでもやっぱりヴァングラスは群を抜いて強くてかっこいい。
襲撃の時にルルをお姫様抱っこしたキツネ目の彼ロットが護衛たちの中では一番強いようで、よくヴァングラスと組み手や模擬剣を使って訓練をしている。
私はそれを眺めながらローラとウォーキングだ。
ここでしっかり体重を落とすのだ。
そして日が落ちる頃お風呂だ。
ヴァングラスは護衛たちと一緒に湯に浸かり、私は自分の部屋でお風呂タイムだ。
この前トムからバラの花びらをもらったから贅沢にもバラ風呂に浸かる。
ローラが丁寧にお世話してくれる。
夕食はヴァングラスのお部屋で摂る。
もちろんテーブルの角を挟んでアーンで食べる。
ヴァングラスの一口は私よりも大きいのでちょっと多めに載せるとベストな感じだ。
逆にヴァングラスは私に合わせて少なめに載せてくれる。
この一週間の成果だ。
そして就寝。
ヴァングラスは私を部屋まで手を繋いで送ってくれる。
部屋でギューをしておやすみなさいをする。
いつもなかなか離れがたくて、いつまでもヴァングラスの胸にくっついているから、ケイトがはいはいと彼を部屋から出してしまう。
朝から晩までずっといられたこの一週間、間違いなく私とヴァングラスの距離は一週間前より近づいたのではないかな?
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