それは良い考えだ!
みんな腰は大事だよね…。
ヴァングラスは夕食の少し前に帰ってきた。
私は遅い昼食を摂ったらまた眠くなりずっと寝ていた。
怪我した体が睡眠を欲しているようだ。
そして、ちょうどヴァングラスが帰ってきた時に目が覚めた。
ヴァングラスの気配を察知して目が覚めたみたいでちょっと恥ずかしい。
そっとドアが開く。
「お嬢様、お目覚めでしたか」
ケイトとローラは私が寝ている間も今みたいに様子を見守ってくれていたようだ。
「ええ、少し前に目が覚めたの」
「旦那様が夕食をご一緒したいそうですが、いかがいたしますか?」
もちろん、イエス一択だ。
「もちろん喜んでとお伝えして」
ケイトが頭を下げヴァングラスに伝えに行ってくれた。
「お嬢様、旦那様がいらっしゃる前にガウンを羽織りましょう」
ローラが私にガウンを羽織らせてくれた。
「ありがとう。ヴァン様がこちらにいらっしゃるの?着替えた方が良いかしら」
「いえ、無理をせず楽な格好でとおっしゃっていました。お食事もこちらにご用意いたします」
うう、ヴァン様は安定の気遣いと優しさだ。
「わかったわ。ローラ、髪とかおかしくない?」
「大丈夫です。お可愛らしいですよ。いちおう少しだけ整えましょうか」
ローラが手慣れた手つきで私の髪をすっきり編み込んでくれた。
「ありがとう。素敵だわ」
私は無理をせず、ローラがセットしてくれたクッションにもたれてベッドで待った。
テーブルには美味しそうな夕食が並べられていく。
かぼちゃのポタージュ、ふんわり柔らかな白パン、温野菜のサラダ、メインは若鶏のソテーなどなど……。
私の好きなメニューばかりなのは気のせいだろうか?
料理が並び終わる頃、コンコンとノックがした。
ローラがすぐにドアを開けるとヴァングラスが中に入って来た。
ヴァングラスも一緒に出かける時とは違うラフな格好をしている。
「ミリー、ただいま。痛みはどう?」
「ヴァン様、お帰りなさいませ。ゆっくり休んだので、随分楽になったような気がします」
「良かった。でも、まだ無理しないようにね」
ヴァングラスがすっと私をお姫様抱っこして運んでくれる。
私はハッとした。
「ヴァン様、私重くないですか!?」
ヴァングラスは私を抱えたまま首を傾げる。
「いや、全然重くないよ。どうして?」
「実は昼食の時私が怪我を痛がったので、ケイトが誰かに抱えて運んでもらおうとしたのですが…」
「誰に運んでもらったのかな?」
心なしか笑顔なのに圧を感じる?
「男性の方々は腰を心配なさって目を逸らしていらしたので、ローラが運んでくれました。やはり、私は重そうに見えますか?」
ヴァングラスはなぜか満足そうな表情をなさった。
「全然重そうじゃないよ。きっとみんなは女性であるミリーに気軽に触れるのを躊躇しただけだよ。気にしないで大丈夫」
そうだったのか!良かった。
でもちょっと太ってしまったのは間違いない事実だから、やっぱり怪我が治ったらダイエットしよう。
ヴァングラスは私をそっと椅子に降ろした…りせず、ご自分の膝に乗せた。
これは馬車と一緒のお膝抱っこ?
私はハテナを浮かべてヴァングラスを見る。
「まだ、痛みがあるだろう。こちらの方が負担が少ないから」
なるほど。確かに昼食の時よりヴァングラスの膝の上でもたれている方が痛くない。
「お気遣いありがとうございます。確かに楽です」
あれ?何かケイトとローラが生温かい目をしている?
「はい、ミリー」
ヴァングラスがちぎったパンを差し出してくれた。
私は反射でパクリと食べた。
て、違う、違う。
「ヴァン様、自分で食べられますわ。昼食だって1人で食べられました」
「でも右手に包帯をしてあるし痛みもあるだろう?」
それはそうだけど……。
「ヴァン様が大変ではありませんか?」
「じゃあ、もし私が右手を怪我をして食事をとりづらそうにしてたらミリーはどうする?」
「もちろん私がヴァン様に食べさせて差し上げます!」
私は元気に宣言する!
ヴァングラスが私のアーンで食べてくれる?
それはとても幸せな気持ちになるに違いない。
もしかして、ヴァングラスも同じ気持ちなのだろうか。
「ね?だろう?…そうだ!ミリーが気になるのなら、怪我が治ったら今度は私に食べさせてくれるのはどうかな?」
それは良い考えだ!
「はい!是非それでお願いします!」
ヴァングラスが良い笑顔で頷いた。
そして私はヴァングラスに手ずからデザートまで全部食べさせてもらったのだった。
自分で食べるより美味しく感じるのが不思議だ。
絶対早く良くなって私もヴァングラスにアーンをして差し上げよう!
心なしかケイトとローラが、甘さマシマシの山盛り生クリームにチョコレートソースをこれでもかとかけたパンケーキを食べた後のような表情なのは気のせいだろうか?
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思ったより早く用事が済んだのでいつもと同じくらいの時間に投稿できました(^^)/





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