何でさ!?
寝返りコロコロして寝たのだった。
私は悩んでいた。
ヴァングラスから私は琥珀糖や髪留め、そして日々細々とちょっとしたお菓子をいただいている。
こんなに貰いっぱなしで良いのだろうか?
いや、そんなのはいけない。
私も何かヴァングラスにお返しをしたい。
何が良いだろう?
女官の仕事終わり、私はパトリシアに相談をする事にした。
「あのね、パティ。ヴァン様からお土産とか髪留めとかいろいろいただいているでしょう?何かお返ししたいと思うんだけど、何がいいと思う?」
「うーん、ヴァングラス様は何でも喜んで受け取ってくれると思うよ」
確かにヴァングラスは優しいから何でも喜んでくれそうだ。
「ヴァン様、優しいからね〜」
パトリシアは気のせいか残念な人を見る目で私を見た。
「刺繍したハンカチとかはどう?」
ハンカチ!?
世の婚約者や恋人、家族に贈るナンバーワンの!?
「それは流石にヴァン様もご迷惑じゃないかな?」
「絶対、喜ぶ!私が保証する!」
パトリシアの目がマジだ。
もしかしたら騎士への贈り物の定番なのかもしれない。
「分かった。それにしてみる」
確かに騎士は訓練とかで汗をかくし、ハンカチはたくさんあっても困らないのかもしれない。
相談して良かった。
「ミリーはヴァングラス様の事どう思ってるの?」
「ピョ」
途端にカカカ〜と顔が熱くなるのを感じた。
それを見たパトリシアはなぜか目頭を押さえていた。
「えっと、パティ?」
「大丈夫!努力は報われるんだって実感して感動しただけだから!」
よく分からないけど頷いておく。
「きっとヴァン様にとって私はお孫さんと同じ感覚なのかもしれないけど、私はすごく好きだなと思っております……」
パトリシアがものすごく残念な生き物を見る目で見てきた。
何でさ!?
* * * * * * *
刺繍を入れるハンカチはイーギス商会以外の商会でルルに買ってきておいてもらった。
私はもうイーギス商会には関わらないと決めたのだ。
名前の刺繍糸はヴァングラスの綺麗なルビー色の瞳と同じような紅にした。
婚約者や結婚相手だと名前と家紋を入れるのだが、私はどちらでもないのでエスコートしてもらった時に一緒に見た蓮華の花を家紋の代わりに刺繍する事にした。
お孫さんが大好きなヴァングラスは、お孫さんの好きな花なら喜ぶだろう。
私は刺繍が結構好きだったりする。
もちろん腕前は普通で、すっごく早くできるとか素晴らしい出来映えって訳ではないのだが、贈る相手を思ってチクチクする時間が好きなのだ。
エランシオにも婚約者の義務として名前と小面倒臭い王家の紋章を刺繍したハンカチを贈った事があるが、一応ありがとうと言われたものの、その目は雄弁にいらないと語っていた。
一度も私が刺繍したハンカチを持っているのを見た事がないので、多分さっさと捨てたんじゃなかろうか。
ヴァングラスだから捨てる事はしないと思うが、喜んでもらえるか不安だ。
困らせてしまったらどうしよう。
今更ながら心配になってきた……。
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