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パティは2人の攻防を見ていたよ

ミリアムの親友、パトリシア視点のお話です。

 ミリアムが女官として勤め始める前、私たち下級女官の(あいだ)で彼女は第二王子殿下に衆目の中 婚約破棄された悲劇のご令嬢として噂の的となっていた。

 第二王子殿下の元婚約者……、あまり印象に残る(かた)ではなかったが、貴族令嬢にとって婚約破棄だなんてどれほどのショックを受けているのだろう……。

 毎日泣き暮れているのだろうか……。

 結婚を諦めて失意の中、女官に仕官することになったのだろうかと……。



 そして、ミリアムが女官として勤め始めるとみんな目をパチクリさせていた。

 目がキラッキラしている!?


 同姓同名の他人かと思われたりもしたが、勿論そんな事はあり得ない。本人であった。

 栗色の髪は確かによく見かける色だが肩ほどの長さで毛先がクルンとなっていて可愛らしく、焦茶色の瞳はパチリと二重でまつ毛が長く、唇は淡いピンクでちょこんとしていて、肌が白くてきめ細かい小さな卵型の顔。身長は平均くらいで、所作がとてもきれいだ。

 ミリアムはパッと目を惹く訳ではないのだが、可愛らしい容姿であった。


 生き生きとお仕事をするミリアムに、意地悪く婚約破棄を訊く女官仲間もいたが、ミリアムはとくとくと もしあのまま第二王子殿下と結婚していたらの結婚生活を語った後、夢のおひとり様ライフをかなりの熱量で語って聞かせた。

 下級女官の中で無理に結婚しなくても良くね?という風潮が起きた……。

 ミリアムはあっという間に女官に馴染んでいった。


 私はミリアムとペアで仕事を組むことが多かったのと、彼女の明るい性格もあってすぐに仲良くなった。




「ミリー、お昼一緒にいいかな?」

「もちろんです、ヴァン様」

 私の婚約者ラルフと一緒にお昼に現れる近衞騎士団長ヴァングラス・トルード辺境伯。

 彼はさも前からラルフと一緒にいますよという顔をしているが、全くそんな事はない。

 ミリーが女官になってからラルフと一緒にいるようになったのだ。

 間違いなく私たちをだしに来てますよね!?


 ヴァングラスは子供どころか孫までいるので、女官たちの中で結婚相手としてはノーマークだ。

 しかし、近衞騎士団長で群を抜いて強く、見目も整っているし、剣を持った時の鋭い目と、普段の柔和で優しい雰囲気から訓練場ではキャーキャー騒がれる存在であった。

 実際、よく夜のお誘いも受けていたようだし、まあ大人の男性なので後腐れない人を選んでそれなりに相手もしていたみたいだ。


 そんな彼はミリアムが女官になった途端、猛攻撃を始めた。

 今まで女性相手に自分から動くところを見た事がなかったので、一時期女官達がザワザワとなった。

 自身の戦闘スタイル同様、意中の人にはこんなに猛攻撃なのかと。

 それをミリアムは(無意識に)華麗に柳の如く受け流す。

 騎士達も見本にすべき流し技だった。

 皆がその攻防を生温かい目で見るようになった。


 ミリアムが女官になってまだ三週間、ミリアムの流し技にもめげず、お互いを愛称で呼ぶまで距離を詰め、お昼のメニューは交換こなんて仲良くしている姿を見ると、その日々の努力に頭が下がる思いだ。


「ミリー、はい。これこの間の遠征のお土産」

「ありがとうございます」

 私もラルフからブレスレットのお土産を受け取るが、今ミリアムがもらった琥珀糖のお土産は私のもらったブレスレットの値段の倍する。

 確か希少な砂糖が使われていて、入れ物の小瓶も凝っていて高いのだ。

 何となくミリアムは気づいてないどころか何かを勘違いしている空気を感じる……。



「私も来週の水の日は休みなんだ」

 ミリアムの休みを聞いたヴァングラスがしれっと言うが、えっと驚くラルフの顔を見ると嘘だな。

 今から合わせて取るんだろう。


「私も買い物に行こうと思ってたんだけど、一緒にどうかな?」

 おお、デートのお誘いだ。

 今日も果敢な攻めを見せる。

 そこにミリアムから爆弾発言が!


「2人で出かけるのは奥様はきっとお嫌ではないかと思うのですが……」

 え!?奥様いると思ってたの!?



 思わず死魚目になるようなひどいお見合い話をミリアムから聞いた。

 気分転換にと訓練場の見学に誘ったのだが、みんなも注目する目の前のこの状況をどうしたら良いのやら……。


 ミリアムからお見合いをした話を聞いて焦ったのだろう。

 ヴァングラスはミリアムの両肩をガシッと握った。

 今まで適切な距離を保っていたからミリアムもびっくりしただろう。

 ヴァングラスも初めてのミリアムとのこの距離に一気に周りが消えているようだ。

 思い切り2人の世界にダイブしたヴァングラスとミリアムはお互いの事しか目に入っていないが、どうしよう……ガシャリと剣を落としたとこから注目を浴びている。

 カカカ〜と色白な頬が赤く染まり、目が潤むミリアムに、徐々にヴァングラスの顔が近づいている。

 いやいや、ストップ!

 私は慌てて咳払いした。


 その後の2人の会話によると、ヴァングラスはミリアムのお父上にご挨拶に行くようだ。

 お見合いの話を聞いて、そちらの砦も攻める事にしたのだろう。


 さすが歴戦の猛者ヴァングラス、ミリアムを落とす日は近そうだ。














いいね、ブックマーク、評価をありがとうございます。


ヴァングラスの努力を見ている人は多く、みんな生温かい目で応援しています。

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