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【電子書籍化】王太子が公爵令嬢に婚約破棄するのを他人事で見ていたら後日まさかのとばっちりを受けました  作者: 雅せんす


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素敵なおひとり様ライフの第一歩

33才にもなって自分で口説き落とさなくてなんとする。

 あの妖精さんのお茶会の数日後に、王城から女官の任命書が届き、私は本当に王城の女官になる事ができた。

 私の素敵なおひとり様ライフの第一歩だ。

 領地のお父さまにはお手紙で知らせたが、きっとピョと驚いたに違いない。



 女官は上級女官、中級女官、下級女官の3つからなる。

 もちろん私は下級女官からスタートだ。

 主に王城の雑用や掃除、中級女官の補佐などのお仕事だ。

 下級女官長から推薦を受け、昇給試験に合格すると中級女官になる事ができるそうだ。


 中級女官は、王城に勤める人たちが快適にお仕事が出来るように段取りを組んだり、お茶などの給仕をする。

 あと上級女官の補佐などなど。

 下級女官には高位の貴族の推薦を受けた優秀な平民もいるが、中級女官は貴族を相手にするお仕事だから平民はいない。


 上級女官は王族や他国の高位の方々に応対する女官だ。

 幅広い教養と高い礼儀作法が求められるので、選ばれた子女が上級女官として仕込まれる。

 そして、その中でも優秀な者が王妃や側室、王太子妃の専属侍女となる。

 専属女官はエリート中のエリートだ。


 服装は皆一緒で丸襟にくるぶし丈の黒いシンプルなドレスに、白いエプロンを着ける。

 白いエプロンには細長いポケットが付いており、そこに扇子を入れる。

 淑女にとって扇子を身につけないのは、騎士が戦場に剣を持たないで行くのと同義だ。


 そして、階級によって襟に付ける薔薇の形のピンの色が変わっていく。

 下級女官は白色、中級女官になると黄色、上級女官になると青色、そして更に専属侍女になると専属になった方の決められた花の形のピンになる。

 王妃は真紅の薔薇で、5人の専属侍女がいるとの事だ。



 ちなみに女官長は全ての女官をまとめる存在で、上級女官の中から前女官長から指名されて選ばれる。

 能力だけでなく、人柄も大きく重視されるそうだ。

 ピンは花ではなくソルリディア王国の紋章入りの金のピンバッチになる。

 妖精さんのお茶会の時は女官長様のピンまで目がいかず気づかなかった……。



 下級女官になって三週間、大分仕事にも慣れてきた。

 初日はこんな高価な花瓶や壺を磨くなんてと手が震えたものだが、今はさくさく綺麗にできるようになった。

 王城の掃除も筋肉痛で死にそうになっていたのが、遠い昔のようだ。

 慣れってすごい……。



「ミリー、そろそろ食堂にお昼を食べに行きましょう」

「了解〜」

 仲の良い友だちもできた。

 同じ伯爵家の三女でパトリシア・ナリストラ。

 私のひとつ年上で職場の1年先輩になる。

 小柄で少し癖のあるオレンジ色の髪は両耳のあたりでお団子にして、赤みの強いオレンジ色のクリンとした瞳、笑うとエクボの出る口元がかわいらしいパトリシアは、よくペアで仕事する事が多く自然に仲良くなった。

 パティと愛称で呼ぶ仲だ。


 そして仲良くなった人がもう1人……。

「ミリー、お昼一緒にいいかな?」

 垂れ目がちのルビーの目をニコリとさせて、ヴァングラスが私の隣に座った。


 一緒にいるのはパトリシアの婚約者の近衞騎士団のラルフだ。

 ラルフは短い赤茶色の刈り上げた髪に太い眉毛、髪と同色の瞳の筋肉ムキムキの23歳。

 伯爵家の三男だから家は継げないので、学園を卒業すると同時に見習い騎士になり昨年騎士爵を取った青年だ。

 見習い騎士から騎士になると、もれなく騎士爵が取れるので、家を継がない次男以下や腕に覚えのある平民は騎士を目指す人が多いらしい。

 ラルフはパティの隣に座った。


「もちろんです、ヴァン様」

 ヴァングラスとは王城に勤めてからよくおしゃべりする仲になったのだ。

 私がパトリシアといる事が多く、ヴァングラスもラルフと一緒に食堂に来る事が多いので、だいたい4人で一緒にお昼を食べる。

 気さくなヴァングラスは早々にヴァンと呼んでと言ってくれたので、私もミリーと呼んでもらっている。


「ミリーは今日何にしたの?」

「私は今日はハンバーグです。ヴァン様は?」

「私は白身魚のソテーにしたよ。はい」

 ヴァングラスはそう言って私のお皿に白身魚のソテーを半分切り分けて載せてくれた。

 私もハンバーグを半分切り分けてヴァングラスのお皿に載せる。

 そして2人でニコニコ食べた。

 違う種類のメニューも食べられて良いねと、いつからか半分こして交換するようになったのだ。

 きっと私の事はお孫さんと同じ感覚なのかもしれない。


「そうだ、はい。ミリー、これこの間の遠征のお土産」

 ヴァングラスはそう言って、色とりどりの琥珀糖が入った綺麗な透かし模様の小瓶を私に渡してくれた。

 向かいの席ではラルフも、パトリシアにブレスレットのお土産を渡していた。

 さすがヴァングラス、ラルフがパトリシアにお土産を渡しづらくないように私にもお土産を買ってきてくれたのだ。

「ありがとうございます」



「そういえばミリー、来週の水の日のお休みはどこか出かけるのかしら?」

「弟の誕生日が近いからプレゼントを買いに行く予定よ。いろいろ見て回る予定なの」

 朝からお店をいろいろ見てかわいいリクトの喜びそうなプレゼントを探すのだ。


「私も来週の水の日は休みなんだ」

 ヴァングラスがそう言うとラルフが、えって顔をした。

 が、ヴァングラスが笑顔を向けるとスッと顔を逸らしていた。

「私も買い物に行こうと思っていたんだけど、一緒にどうかな?」

 ヴァングラスと一緒…男の人に一緒に見てもらった方がリクトの喜ぶ物も選びやすそうで私はうれしい。

 でも…。


「2人で出かけるのは奥様はきっとお嫌ではないかと思うのですが……」


 ヴァングラスが不思議そうに首を傾げる。

「私に妻はいないよ?」

 私も首を傾げる

「息子さんとお孫さんがいらっしゃるんですよね……?」

「ああ」

 ヴァングラスは合点がいったようにニコッと笑った。

「いろいろ事情があって妻が息子を産んですぐ離縁してるんだ」


 何と!ヴァングラスにエスコートされたあの日から約ひと月、初めてヴァングラスに奥様がいない事実を知りました。











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