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新しい縁談ではなく?

私は目をカッと見開いた。

 薔薇を模したチョコはすごかった!

 ハッと気づいた時にはもう手に無かった。


「どうであった?」

 妖精さんがワクワクと私の方に身を乗り出していた。


 私も興奮して身を乗り出して答えた。

「私は始め、薔薇は真珠の粉で作られたオブジェだと思っておりました。それほど、この薔薇のチョコは精巧でございました。また、薔薇に付いている朝露の色が、ともすれば単調な薔薇の真珠色に彩りを与えており、より美しく感じました。そして食感ですが、チョコの花びらは極薄くパリッというのと同時に朝露の飴細工がカリッと致しまして、心地良かったです。味は柔らかく丸みを帯びたような優しいチョコの甘さに、飴細工のオレンジやレモン、ベリーの酸味が絶妙なアクセントで大変素晴らしくおいしかったです。最後に仄かに残る香りは本日出していただいた紅茶でしょうか……」

 私はあの美味しさを思い出し、ほぅとため息をついた。


 そうかそうかと妖精さんがとても嬉しそうだ。

「もしかして、このチョコはショコラ・ローズのものではないでしょうか?」

 もう妖精さんは目がキラキラしている。

「そうだ。よく分かったな。ショコラ・ローズの新作だ」


 私も目がキラキラしてしまう。

「弟から卒業祝いのプレゼントとして、ショコラ・ローズのチョコを贈ってもらったのです。そのチョコも素晴らしかったので、もしやと思いました。ショコラ・ローズのチョコは見た目、食感、味、香り、全てがパーフェクトなのです!」


 妖精さんが握手を求めてきたので、私は昂る気持ちのまま手をガシッと握った。

「我らは友だ!」

「はい!」

 元気に返事をした後、宰相様の咳払いで、妖精さんは王様だったと思い出しハッとしたけれど後の祭りだった……。

 その後、王様からチョコ友としてショコラ・ローズのチョコが定期的に送られるようになるのであった。



 お茶会も菓子を粗方食べ、そろそろお開きかなと言う時、宰相様がチラチラと妖精さんに目配せを送っていた。

 妖精さんは小首を傾げたがハッとしたように何か紙をゴソゴソ出し、袖の内側にセットしていた。

 何となくこれは見なかったことにした方が良いかなと判断し、目を逸らしておいた。

「さて、愚息エランシオの失礼に対し、誠意を見せたいと思う」


 そこで妖精さんは宰相様を見た。

「ハウネスト嬢、ハウネスト領の橋の件は把握されていますか?」

「いえ」

 私は首を横に振る。何かあったのだろうか?

「ハウネスト領において、雪解け水のせいか、それとも何者かによって故意にかはまだ不明ですが、橋が流されてしまったそうです」


 橋というとハウネスト領では1つだけだ。

 無ければかなり領民が困ってしまう橋だ。

「いち早くハウネスト伯は橋の修理を始めましたが、多額の費用がかかることになるでしょう。誠意としてその修理にかかる費用の半分をこちらで持つことにいたします。いかがでしょうか?」


 私は椅子から立ち、床に跪き、手を組んで額につけ頭を深く下げ、感謝の最上級の礼をとった。

「御聖恩に心から感謝いたします」

 いや本当にありがたすぎるやらかし案件に対する誠意だ。

 私の頭ひとつ下げるのでは足りないくらい感謝だ。

 どんなにお父さまや領民たちが助かる事だろう。


 最上級の礼を受け取った宰相様の手を借りて椅子に戻る。


「それとは別に私からも謝罪を」

 宰相様が突然謝罪を口にされた。

 何かあっただろうか?


「私が結んだエランシオ殿下との婚約が破棄となった事を謝罪いたします」

 いやいや、それは全く無問題。

 婚約破棄の流れに全力で乗ってしまった身としては居た堪れない。

「謝罪を受け入れます。ですが、どうぞお気になさらず。宰相様のせいではございませんし、婚約を破棄されたのは私にも至らないところがあったためでしょう」

 本当に気にしないで……と思った時、ふと思いついてしまった。

 いや、そんな厚かましい事ダメよと思いつつ、もう1人の私が言ってみればと唆してくる。


「あの……もしも宰相様がどうしてもお気にされるのでしたら、1つお願いがございます」

 言ってしまった……。

 宰相様は特に不快そうではない感じだ。


「ご迷惑でなければ、王城に勤める女官の紹介状を書いていただけないでしょうか?」

 想像した願いと違っていたのか、宰相がキョトンとした。

「新しい縁談ではなく?」


 なるほど、そちらの願いの方を思ったのか。

 たがしかし、正直もう私と合う年齢の方はみんな婚約済みなので新しい縁談相手に期待できない。

 それよりも私の夢のおひとり様ライフを叶えるため、手に職持って働くことが大切なのだ。


「はい、どうか紹介状をお願い致します」


 宰相は何故か脇に控えたヴァングラスを見た後、紅茶を淹れてくれた手際の良い優雅な女官を見た。

「女官長、ハウネスト嬢を雇う事は可能ですか?」


「はい、所作もきちんとしておりますし問題ないかと思います」

 宰相様は頷くと、何かを紙にサラサラと書いて女官長様に渡した。

「女官長にハウネスト嬢の推薦状を渡したので、後日王城から女官の任命状が届くかと思います。頑張って勤めてくださいね」


 何という事でしょう!就職が決まりました!!










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[良い点] 女官長直々の推薦状ッ!(カッ)
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