運命の扉がいま開く
ミリアムの恋愛編、スタートです!
「大変でございます、お嬢様!」
バンとドアが開いて、珍しく慌てた執事のセバスチャンが部屋に入ってきた。
「お、王城より早馬で招待状が届きました!国王陛下からお茶会の招待状にございます!」
……何ですと?
我がハウネスト家は伯爵家なので、高位のお茶会にもちゃんと呼ばれるが、国王からお茶会なんてまずありえない。
というかあの国王は自分のご趣味(何かは謎になっている)に真摯なお方で、宰相にお仕事諸々を丸投げ状態なので、国王からお茶会のお誘いなんて聞いた事もない。
その時思い出した。
あれか!?あれなのか!?
あの笑撃の婚約破棄でエランシオがやらかした扇子言語のルール違反のあの一件……。
扇子言語に対して、怒りを相手に見せ、しかも拳を振り上げるなんて言語道断のやらかし案件である。
確か、暗黙のルールとして親もしくは近しい人が被害を被った令嬢をお茶会に招いてもてなし、謝罪と(慰謝料という名の)誠意を見せなくてはいけないのだ。
私の場合それが国王になってしまうのか。
何て迷惑な!エランシオ!最後の最後まで!!
「セバスチャン、それ扇子言語のルール違反のお詫びお茶会だと思うわ」
扇子言語ルール違反案件は、大っぴらに話ができない事になっているのでセバスチャンにも知らせてなかった。
と言うより、婚約破棄の笑撃が大きすぎてお父さまもお母さまも忘れていたのだろう。
今の今まで、私もすっかり忘れてた。
卒業パーティーでエランシオがやらかしたのだろうと察したセバスチャンはやっと納得の表情を浮かべた。
「でも私も故意ではないとはいえ、第二王子殿下に怪我をさせてしまったし(鼻に扇子を突っ込んだし)、遠慮できないかしら」
どうにかして行きたくない。
国王とお茶会なんて、気疲れしそうで本当に嫌だ。
「それは難しいかと」
ですよね……。
「お茶会はいつなのかしら?」
「明日です」
「……明日?」
「はい、明日です」
明日お茶会マジですか!?
そこから大変だった。
国王のお茶会にふさわしいドレスを選び、ふさわしい宝石を選び、ふさわしい小物を選び、ふさわしい髪型を考え……。
どうにか当日を迎えたのだった。
本当に何て迷惑な……。
********
「は?陛下、今何と?」
ピアネスは今あり得ないことを聞いた。
「ん?エランシオが扇子言語のルール違反をやらかしたであろう?あれの親として明日お茶会を開く。ハウネスト嬢には今招待状を送ったぞ」
何を言っているのでしょう?明日??招待状を今??
困惑のピアネスの前でバラドクスは晴れ晴れと良い笑顔を見せた。
「新作のショコラができたのだ!ちょうど良いであろう」
それが目的か!
バラドクスは案の定、新作ショコラと招待状以外、慰謝料の事もショコラ以外の菓子の手配も場所すらも何にも全く考えていなかった。
ピアネスは、机に高積みの書類とお茶会諸々に乾いた笑いが出た……。
いや、忙しくてエランシオのやらかし案件を忘れていた自分も悪いのだ…。
バラドクスはさっさと愛の巣に帰っていったが、ピアネスは完徹で全てを成し遂げた。
茶会室の予約を捻じ込み(前日に!?と呆れられ)、飾り付けを手配し(前日に!?と睨まれ)、ショコラ以外の菓子もショコラがメインになるよう手配し(前日に!?と白い目で見られ)、ショコラに合う紅茶を選び(しょうがないから自分で)、当日に付く女官を手配し(私しか手が空いておりませんと女官長に冷たく言われ)、慰謝料を国王の予算から捻出し(エランシオの予算はもう別に組み込んでしまった)、あと忘れたら大変バラドクスのカンペ(ないと心配)、その他諸々、そして高積みの書類も全て終えた時は朝日が目にしみり、涙が滲んだのだった……。
そして思う。
きっとハウネスト嬢も前日にお茶会の招待状をもらって大変であっただろうと…。
本当に何て迷惑な……。
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ミリアムの恋愛に加え、ざまぁのお話も入る予定です。
楽しんでいただけたら嬉しいです(*´꒳`*)





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