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公爵令嬢コーネリア 前編

コーネリアとポアラの番外編を挟み、ミリアムの恋愛編ざまぁありに進みます(^^)


 私の運命はお母さまのお腹にいた時から決まっておりました。


 産まれてすぐにアルトバルトと婚約が結ばれ、アルトバルトはレシャールカ公爵家の後ろ楯を得て、速やかに王太子の地位を賜ったそうです。

 ものごころついた頃、お父さまに王家のために必要な婚約なのだと言われました。


 そして婚約者であるアルトバルトに初めて会ったのは、私が礼儀作法を大分身につけた4才の時でございました。

 初めてお会いしたアルトバルトは、まあるいパチリとした青い目にキラキラとした金の髪でまるでお人形さんのような可愛らしい男の子でした。

 ニッコリ笑って握手をしてくださいました。


 でも楽しかった思い出はこれだけ…お互い勉強が進むにつれてどんどん差が開き、6才になった今、アルトバルトは悔しげに唇を噛み、私を睨むようになってしまいました。

 周りの大人が私ばかりを誉め、アルトバルトには私を見習うようにと言うのです。

 私はアルトバルトが努力をしていることを知っております。

 何とか元気づけたかったのですが、どうして良いかわかりませんでした。




 公爵邸に帰ってずっと考えても、良い考えは浮かびません……。

「リア、難しい顔してどうしたの?」

「リチェ!」

 柔らかそうな白金の髪にアクアマリンの瞳、左の目の下の泣きぼくろが可愛らしい、3つ年上の私の大好きなリチェです!

 リチェはお父さまのお友だちの娘さんで、よく遊びに来てくれるのです。

 私は嬉しくて抱きつきました。



「リアはどんな言葉を言われたら嬉しい?」

 私がアルトバルトの事を相談すると、リチェはちょっと考えそう聞いてきました。

「私は…あなたは素敵って言われたら嬉しいです」

「リアは素敵」

 すかさずリチェは私に言ってくれました。

 私は心がくすぐったくてクスクス笑いました。

「嬉しいけど、リチェじゃ駄目です。リチェは私の家族のように思ってるから。家族以外に言われてみたいのです」

 リチェは笑い、髪を撫でてくれました。


「あなたは素敵って王太子殿下に言ってみたら?」

 私は首を横に振ります。

「2人だけになれる時はないから…きっと人前で言ったら傷つけてしまいますわ」

「扇子言語は?」

 私はお妃教育を優先して、まだ扇子言語は少ししか覚えていません。

 でも、扇子言語は良い考えかもしれません。

 それなら人がいても大丈夫です。

「私頑張って覚えます!」

 小さく拳を握りしめる私にリチェは少し寂しげに微笑んだのでした…。



 それから早速アルトバルトに向け、ドキドキしながら扇子を左手で開いて胸に当ててみました。


"あなたは素敵"

 アルトバルトは怪訝そうに見ただけで何も言いませんでした。

 まだアルトバルトも扇子言語を少ししか覚えてないのかもしれません。

 後で調べてくれるでしょうか。

 私はドキドキと待ちましたが、結局その後も何も言われることはありませんでした。


 アルトバルトはどんどん辛そうな表情をする事が増えました。

 7才になった今は睨むどころか目も合わせてくれません。

 私は心配になり、扇子を閉じ3回右手の甲を撫でました。

" 大丈夫?"


 アルトバルトはちらと見ただけで何も言いません。

 私はまるで空気のようです……。

 涙が溢れそうになりましたが、淑女は人前で涙を見せてはならないと習いました。

 泣いたりしたらもっとアルトバルトに嫌われてしまいます。

 私は無理に微笑みを浮かべました。


 それからもアルトバルトから反応が返ってくることはありませんでしたが、私はずっと扇子を動かし続けました……。


" あなたは素敵" "大丈夫?"

 私はあなたの心に寄り添いたいのです。


 ただただ、無言の月日が流れるだけでした。



「殿下、よろしかったら扇子言語を覚えませんか?」

 珍しく目が合ったアルトバルトに聞いてみた瞬間……彼は軽蔑したような目を私に向けました。


「母上は扇子言語ではなく心は言葉で伝える事が大切だとおっしゃった。君は扇子言語なんて悪しき習慣を私に勧めるのか?」


 心を言葉で伝えるのが大切なのは間違っていません。

 でも扇子言語は貴族にとって大切な言語で、絶対に理解できなくてはいけない言語の筈です。

 でも……アルトバルトの蔑むような目に私は何も言えず、ただ小さく申し訳ありませんと言うのが精一杯でした。




 公爵邸に帰ると数ヶ月ぶりにお父さまが帰っていました。

 お母さまは元々体が弱く私が生まれてすぐに亡くなってしまったので、お父さまは私にとってはただ1人の血のつながった大切な家族でした。


 今日も目の下の隈がひどいです。

 お父さまは国王に代わってお仕事をされているそうです。

 そんなお父さまに会いたいだなんて、寂しいだなんて我儘はいえません。


「お父さま、ご機嫌よう」

 私がニコリと笑って練習したカーテシーを見せると、お父さまは優しく抱き上げてくれました。

「上手になりましたね」

 私は嬉しくてお父さまの首にキュッと抱きつきました。

「何か困った事や辛い事はありませんか?」

 困った事や辛い事……私は今日あった出来事をお父さまに伝えました。

 アルトバルトは扇子言語を覚えなくて大丈夫なのでしょうか……?

 黙って聞いていたお父さまはアルトバルトと話をしてみると言ってくださいました。

 私はやっと安心して体から力が抜けました。











コーネリアのお話です。

前編、中編、後編と続きます。


続けてピンクの令嬢ポアラのお話もアップします。







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