そろそろ幕引きといたしましょう
ピアネスにとんだどばっちりが飛んできた。
社畜宰相が誕生した。
婚約者探しに出遅れているバラドクスの王妃はなかなか見つからなかった。
そして、やっとこ選ばれた(残っていた)のはユガンタ帝国の末娘マリアだった。
なかなかに個性豊かな、誰に対しても気持ちを素直に表す姫であったが、王子を産んでくれるなら誰でも良かったので構わなかった。
私ですら理解る扇子言語を覚えてないのは驚いたが、些事だ。
マリアは美しい物が好きで、私の顔も気に入っているようだったが、一番好きなのは宝石だったので、お互い干渉せず、離れた距離感が心地よい女性である。
グレースとは閨を共にしたらしいが、とんと閨の記憶がない不思議な女性だ。
朝起きたら隣に裸のグレースが寝ていてミラクルだ。
シーツの赤い証がどうも鶏の血っぽいのが印象的だった。
とりあえず、王子を産んでくれるなら手っ取り早いので、そのまま側室に迎えてみた。
見事エランシオを産んで、私をショコラの元へ戻してくれたから心から感謝している。
もう1人王子をなんて言われたら嫌なので、エランシオはよその子だよという事は誰にも黙っておいた。
そんな事はショコラの前には些事だ。
もしや、それがグレースの寵妃という勘違いに繋がったのだろうか?
牢の外で待機していた私は、予定外に宰相に聞かれ焦りはしたがしっかり否定しておいた。
私が牢に踏み込むのはもう少し後の予定だったが、まあ良いかとそのまま中に入る。
宰相から何の合図もないのでそれで良さそうだ。
さて、後はいつも通り無表情で黙って宰相を見ればオッケーだ。
宰相が上手く進めてくれるだろう。
「グレース様、残念ながら寵妃ではなかったようですね。さて、そろそろ幕引きといたしましょう。本当にグレース様とエランシオ様には今まで良いエサになっていただきました。お陰さまで、不穏分子の貴族が把握できました。心より感謝致します」
宰相が私の方を見た。
私のセリフだな。
「王命である。側室グレース・ソルリディアは側室の身分を剥奪し、北の塔へ幽閉を命じる」
私は仕込んだ宰相作のカンペをさりげなくめくる。
今回のセリフはアルトバルトの時より長くて大変だ。
「第二王子エランシオ・ソルリディアは第二王子の地位を剥奪し廃嫡とする。西の塔へ幽閉を命じる」
よし、噛まずに言えた。
「陛下!あの夜の事を黙っていたのは私を愛しているからでしょう!?」
グレースが金切り声で叫んだ。
それを言っては宰相に黙っていた事がバレてしまうではないか。
「黙れ。其方を愛した事はない。連れて行け」
衛兵がグレースを速やかに両脇から捕まえて連れて行く。
よし!
宰相が物言いたげな目で見ているが知らないふりをしておいた。
ポカンと口を開けてグレースが連れて行かれるのを見ていたエランシオは、ハッと気づきバラドクスに縋りついた。
「嫌です!父上!公爵でいいです!婚約者もミリアムで我慢します!」
うざい。
「公爵の地位もミリアム嬢も其方がいらぬと言ったのであろう。今更戻らぬ。連れていけ」
衛兵がエランシオを速やかに両脇から捕まえて連れて行く。
「父上ー!父上ー!ちーちーうーえー!…」
とにかくうざかったが、やっと声が聞こえなくなった。
ふと床にエランシオの血がついた鼻の詰め物がポツンと落ちているのが目に入る。
うざい。
「陛下、お疲れ様でございました」
やっと終わったか。
結局、王族から1人も王子がいなくなってしまったが、私は言われた通りちゃんと王子を2人作ったのだから後は知らない。
宰相がどうにかするであろう。
さあ、私とショコラの愛の巣"ショコラ・ローズ"に帰ろう。
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いよいよ、明日で婚約破棄編は一区切りとなり、(ピンクの令嬢)ポアラとコーネリアのお話を挟んで、ミリアムの恋愛編に入りたいと思っています。
引き続き読んでいただけると嬉しいです(^^)





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