デート -5-
「こういうお店もあるんですね」
次にユザミさんが興味を示したのは装備品商家だった。
店内には様々な装備品やアイテムが置いてある。品物の種類毎にスペースが分けられていて、店舗の奥にはアイテム類。左側には剣や盾など武器類が置いてあって、右側には鎧からプロテクターなど防具類。
ユザミさんがそれらに興味をあるとは思えなかったけど、お店に入ってから見回したり物色してるのを見ると興味があるみたいだ。
「何かお探しですかな?」
ユザミさんに声をかけたのはピンと張っているV字の口髭を生やした店主であろう男性。ふんわりとした帽子に高そうなローブは見るからに商人という感じがする。
「カッコいい武器とカッコいい防具とカッコいい魔導書を探しています!」
「ゆ、ユザミさん?」
カッコいい武器もカッコいい防具もカッコいい魔導書も絶対に必要ないだろうに、それらを求めるユザミさんの目は輝いていた。
使うことはないけど見てみたかったのかもしれない。
「なるほどぉ! では一つずつ当店の自慢をお見せしましょう!」
店主は歩き出して、店舗の真ん中にある厳重なショーケースの前で立ち止まる。
そのショーケースの中に入っている剣と鎧には見覚えがあった。
「こちらの剣と鎧! 見れば分かると思いますが、先日我が国に来訪されました世界最強、伝説の名誉騎士セシア・テレスリア様の剣と鎧のレプリカになります!」
それは普段一緒にいる僕でも見間違えてしまうほど精密に作られたセシアの剣と鎧。
出てくるだろうと分かっていても名前を聞くと胸が痛む。僕はそれを無視して剣と鎧を観察した。
「どちらも特殊な金属で製作されていて、剣はどんな鎧でも貫くでしょう! 鎧に至ってはどんな剣でも体を守ってくれます!」
剣の柄頭に神聖ヴィロナス王国のシンボルである、聖剣を持つ騎士が無い。鎧に至ってはここまで煌びやかではないし、胸部が少し小さい気がする。
シンボルは他国の関係で入れることができなかったとして、胸部に関しては測っているわけではないだろうから目測なのだろう。やっぱり、レプリカはレプリカだ。
「こちらの剣と鎧で対決したらどちらが勝つんでしょうか?」
「お嬢さん、よくぞ気づきました!」
僕が剣と鎧を観察してる間に盛り上がっているのか、店主は表情豊かに全身を動かしながら話している。
「その答えは、ずばり! 勝者なんて存在しないのです。どんな鎧も貫く剣とどんな剣も防ぐ鎧——それは永遠にセシア・テレスリア様の身につけられているもの。それに勝負論は必要ないのです!」
「おぉ~!!」
やはり商人といった感じだ。すらすらと言葉が出ているあたり、この受け答えも想定されていたような気がする。
もちろんそれは悪いことではない。商人なら言葉巧みに興味を惹く才能が必要だからだ。