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正しい -2-


「こ、これはスキルの影響なので! だから実質好きじゃないというか——」

「そんなことないです」


 逆に慌てふためいた僕の言葉を遮って微笑み、手を握られる。


 赤く染まった頬と、少しりきむ手。真剣な眼差しでありながら、どこか優しく感じる。


「大好き、です」


 ピキッと体が一瞬硬直する。


 恥ずかしそうにしながらも視線を逸らさない。その発言が曇りの無い好意だと伝わってくる。


 と思った矢先。まるで機械のような一定の早さで顔を逸らされた。


「……」

「……」


 再び沈黙。


 やっぱりユザミさんからの好意は冷静が保てない。初めの頃の皆と同じように緊張しっぱなしだ。


「この感情を……他の皆様も抱いているのですね」


「……はい」


 胸に手を当てて微笑む姿から幸福感が伝わってくる。これはユザミさんだけではない。


 セシアからも、リンからも、イルフからも、ミーシャからも感じたことがある。それは、もしかしたらもう感じ取れないものかもしれない。


 そう考えると、やっぱり——。


「窓の外、見てみませんか」


 僕は胸の痛みから逃げるように提案する。


 皆のことを考えても、もう戻ることはできない。それは最初から分かっていたはずだ。


「窓の、外……」


 ユザミさんが窓の外を見つめる。その横顔は恐怖と不安が入り混じっていて、迷っているのが感じ取れた。


「僕が隣にいます」


 ユザミさんの手を取ると、恐怖と不安の表情にほころびが生じる。頷いたユザミさんと共に窓の前に立つ。


 ユザミさんは下を向いていて窓の外に視線を向けていない。


 窓の外は中央通りの裏で、中央通りより人気ひとけが少ないといっても見る限り十人ほどが歩いている。


 ユザミさんが一息吐いた後、意を決して窓の外に視線を移した。


「——」


 一瞬、体が震える。


 きっと何かしらの影響を受けている。しかし表情や行動には出ず、ただ窓の外をじっと見つめていた。


「やっぱり、お義兄さんには見えません。でも……」


 口をつぐむ。殺意に関しては変わらないみたいだ。


「ダメそうですか?」


「いえ、前より全然大丈夫です。リト様の隣なら抑えられるというか……リト様の隣にいたいという気持ちの方が大きいです」


 ちょっと照れ臭いけど、殺人衝動に駆られて行動に出ないことを知れたのはとても大きい。


「これから外に出てみませんか?」


 ユザミさんのことを知るとはいえ、ずっと部屋にいるのもおかしい話だ。上手くいけば旅に出るのだから、僕の隣だけでも普通に歩けるようにしないといけない。


「外、ですか……」


 外に出るということに若干の戸惑いが感じられる。


 この宿で働いていたとはいえ、一度も宿から出ていないなんてことはないと思う。外に出て、目が合ってしまい、殺人衝動に駆られたという流れが普通だろう。


 戸惑うのも分かる。だけど、これからの為に慣れていかないと。



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