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正しい -1-


「も、もう大丈夫です……」


 それから十分程して、はにかみながら鼻を啜るユザミさん。


 僕としては安心できることが増えて良かった。十二日後に処刑される旨を伝えた時、ユザミさんは苦々しく微笑んでいた。


 生きることを諦め、赦されてはいけないと思っていたはずだ。そんな彼女から生きたいという本当の思いを引き出せたのだから、僕にとってこれ以上の結果はない。


 まだやるべきことはいっぱいある。それらも乗り越えていかなければならない。


「そ、その……手……」


 ちらちらと見たり逸らしたりで様子を伺ってくる。手、と言われて、僕は手を見た。


「あっ、す、すいません!!」


 僕は握っていた手を離す。


「……」

「……」


 ユザミさんが泣き止むまで隣に座り、手を握っていた。手はほんのりと温かみを帯びていて、ベッドの上ということもあり気まずい。


 皆にはこういうことを思わないくらいには慣れたけど、ユザミさんとなると話は別だ。どうしても意識してしまう。


「リオ様の顔や他の方々の顔がお義兄さんに見えないのは、リオ様のスキルの関係でしょうか……」


「……たぶん、ですけど」


 殺人衝動はスキルによるもので、特定の条件を満たす人がお義兄さんに見えるのは精神的な問題。これは予想だけどおおむね合ってると思う。


 ただ十六歳から二十五歳までの男性を限定にスキルが働いているとは思えない。おそらく男性全般……下手したら女性にまでスキルが発動する可能性がある。


 今まで発動しなかったのは単純にお義兄さんの顔をしている人の視線を気にして、その人としか目が合わなかったから。


 もしくはスキルの能力が本人の心境などに関係しているか。


「……そんなこと、ない……よね?」


 後者だとしたら昔の僕はモテたいと思っていたことになる。


 いや、まさか。今はそんなことないと思っているけど、昔の僕だったら……もしかしたら?


「じゃあ、その……この気持ちが精神的な支えになっていて、ということですか……?」


「そうだと思います」


 そう返すと、ユザミさんはまた慌てふためく様子を見せる。


「この温かい気持ちは……つまり、そういうことで」


「……?」


「そ、それも……リト様には分かられている、ということですよね」


「……あ」


 なる、ほど。モジモジしているのはそういうことか。


 色々と説明したからお互い分かっている。ユザミさんは僕のことを好きで、僕は好かれていることを知っている。


 僕は精神的な支えやらに普通に頷いたけど、ユザミさんからしたら、好きな相手に好きとバレていて挙句に精神的な支えです、と伝わっていたようなもの。


 さらにはそれを普通に頷かれるのだから、慌てふためく理由も分かる。



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