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ユザミ・テトライアとの日常 -4-


「ユザミさん」


 僕は椅子から立ち上がり、ベッドに座って俯くユザミさんの前に膝をついて、手を取る。


「僕もたくさん後悔しました。……今も、しています」


 手がとても震えている。それを少しでも安心させられるように包む。


「たくさんの人生を狂わせて、どうしようもできないスキルを恨みながら、毎日生きています。どうにかスキルを解除する方法を見つけられないか、探す為です」


 ユザミさんは僕より抱えていくものが大きい。奪ってしまったものも、これから抱えていかなければならない代償ものも。


 奪った命はあまりにも大きい。それが自分の意思ではないにしても赦されるべきではないと、僕も思う。


「スキルを解除する方法があるか分からないし、当てもありません。それでも、僕達は探すしかない」


 ただ――それで命をもって償えなんて、あんまりじゃないか。


 普通の人がそう思うのは分かっている。セシアとリンが怒ってくれた理由も分かっている。


 だけど――皆はスキルのことを知らない。それがどれだけ不条理で理不尽なことかを知らない。


 知っているのは、僕だけだ。僕は――僕だけは、彼女の味方でなければならない。


「僕と一緒に生きてください。一緒にスキルを解除して――一緒に、罪滅ぼしをしましょう」


 手の震えは、収まっている。


 それははたから見たら求婚しているように勘違いされてもおかしくない。


 僕はそれほどの覚悟をしている。彼女を妻に迎えるという意味ではなく、共に生きて、スキルを解除する為に人生を賭ける。


 そして、今まで犯してしまった罪の代償を、少しでも償えるように生きる。


「私っ、怖い……です。また、誰かの命を……っ」


「今度は僕が全部止めますから」


「でもっ、またリト様でさえもっ!!」


「その時には負けないくらい強くなれるよう頑張りますね」


 顔をくしゃっと歪めて、左手で涙と鼻水を拭うユザミさん。


 僕が包んでいただけの右手からキュッと握りしめられ、その表情は決意に満ちていた。


「大丈夫。僕が、貴方を守ります」


 それと同時に、僕は覚悟を決める。


 ユザミさんが決意してくれれば最初からしようと思っていたことだ。今まで何度も考えて、そんなことはできないと思っていたこと。


 これから三日間はユザミさんのことを知る。許されるなら同じ時間を過ごす。


 そして、処刑まで一週間になったら。



「——おね゛がい、しま゛す……っ!!」



 僕は、被害者の遺族に赦してもらえるよう懇請こんせいする。それが、彼女が生きる為に必要なことだから。





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