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ユザミ・テトライアとの日常 -1-



 Ⅰ



 ユザミさんの処刑まで後十日。刻一刻とその日が近づいている。


 その日までにやらなければいけないことが多い。二日間は僕が心を安定させる為に使ってしまったし、これ以上時間を浪費するわけにはいかない。


 十日のうち、ユザミさんと過ごせるのは三日ほどだろう。後の一週間はユザミさんが処刑を免れるように動かないといけない。


 三日でユザミさんのことを知る。まずはそれからだ。


「ユザミさん?」


 三〇一号室の扉をノックして名前を呼ぶと、足音が聞こえた後に扉が開かれた。


「お、おはようございます……」


 中から現れたのは恥ずかしそうに顔を隠し、指の隙間から僕を見るユザミさん。


 どうやら寝起きのようで髪はいつものように結われておらず、酷い癖っ毛のロングヘアー。何より衣服が少し乱れていて鎖骨あたりが丸見えだ。


「ご、ごめんなさい色々と準備できてなくて……」


「いやいや! 僕が来るの早かったので!」


 時刻は朝九時過ぎだから予定を伝えてなければ寝ていてもおかしくない。時間がないからと短慮になってしまっていた。


「で、出直しますね! 終わったら三〇三号室に——」

「い、いえ! そのっ、準備しながらでも大丈夫でしたら!」


 扉の前から去ろうとした僕の手を取って引き留めるユザミさん。


 顔を隠していて気づかなかったけど、顔が赤い。露出はあるし、ギャップはあるしでこっちまで赤くなってしまいそうだ。


「す、すみません! 話したいことがいっぱいある、ので……」


「そう、ですね……じゃあ、失礼します……」


 ぎこちない会話。お互い敬語で、気を使い合ってて、僕達の関係が分かりやすい。


 僕は玄関に入る前に、顔を逸らして自分の肩を指差す。


「——っ!?」


 すると衣服がはだけて肩が見えていたことに気づき、さらに顔を真っ赤にさせて伏せた。


「……ど、どうぞ」


 気づいているのかいないのか分からなかったけど、気づいてなかったとは。露出を気にしないタイプなのかな、と思ってたけど……そんなことはなかった。


 僕は歩を進めて玄関で靴を脱ぐ。洗面所に入っていったユザミさんに先に部屋に入るよう促され、僕は廊下を抜ける。


「……椅子でいっか」


 数日間ユザミさんが寝泊まりしていたというだけで別空間に感じてしまう。緊張感を感じつつも、僕は椅子に座った。


 しばらくしてユザミさんが廊下から色々な小道具を持ってベッドに広げる。


 見えるのはブラシやプラスチックの入れ物、何かの機械。見る限りヘアケア用品と予想できる。


「く、癖っ毛が酷くて……」


 髪を掴み、引っかかるのを無理やりブラシでかしている。


 表情からは痛くなさそうだけどブチブチ千切れているのが聞こえる。ああでもしないと梳かせないほど厄介なのだろう。



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