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失恋——? -3-


「やっと……好きだと、認めたな」


 見え透いた嘘だとしても貫き通してきた感情が露呈する。リンは羞恥心に見舞われたが、そんなことがどうでもよくなるほど恋慕の感情は大きくなっていた。


「……えぇ、そうよ。好きよ、大好きよっ、愛しているわ!! なんでリトを否定したのって、失望したなんて言ったのって自分が嫌になるくらいに愛してるわよ!!」


 俯いたリンは力いっぱいにスカートの裾を握りしめ、その拳の上に涙が零れ落ちる。


「だけど……っ、仕方ないじゃない……! あそこでリトを認めてしまったら、私はっ、どうやって――」


 セシアはリンのことを視界に入れるのをやめた。霞む視界で自分の膝元を見る。



「——どうやって、あたしはリトを好きだという気持ちを信じればいいのよ……」



 リンは一度、自分の恋愛感情を強く言い聞かせたことがあった。


 それは魔法研究機関レグロノヴァで、ロマニの質問に答えた時だ。


 スキルの解除方法が分かった時、解除するか。それを問う質問に、強い恐怖感を抱いた。


 今、好きだという感情を抱いているのは確か。好きで、大好きで、これがスキルのものだとしても関係ない、と。


 ただスキルを解除して、この気持ちが無くなってしまったら。そう考えてしまった時から、リンの愛慕あいぼは常に揺れ動いている。


「あたしは自分の気持ちに自信を持ちたいの……! だから、受け入れるわけにはいかないのよ……っ」


 自身が間違っていると思うことを、好きだからという気持ちで許容してしまったら。それは病のように体と心をむしばんでしまうと分かっていた。


 好きだからこそ否定するしかなかった。好きだからこそ、認めることはできなかった。


「私と、リンは……似た者同士、だな……」


 セシアはリンの手を取って、ぐちゃぐちゃの表情で微笑んだ。


 スキルの解除方法が見つかった場合、唯一スキルを解除したくないと言ったのはセシアだけ。


 気持ちが無くなってしまったら、と考えて恐怖に縛られていたのは彼女も同じ。


「少し……っ、うるさくするぞ」


 セシアの言葉の意味が泣くことによるものだと理解したリンは一度セシアに視線を向けて、再度膝元に戻す。


「聞こえちゃう、わよ……?」


 リトに聞こえてしまうことを危惧きぐするリンにセシアは小さく微笑んだ。


「聞かせて、やればいいじゃないか。お前を……心の底から愛してる私達が、こんなに、泣いているんだぞって……っ」


 くしゃっとさらに歪むセシアの表情を見て、リンの表情も同じように歪んだ。


「乗ってっ、やるわ!! プライドなんて、知らないっ、から……!」


 二人は前を向き、顔を上げ、次第に心の中に抑え込んでいた感情を解き放つ。



 彼女達の心は、限界に達した。









 ——大声で、泣き叫んだ。



 零れ落ちる雫を何度も拭い、

 プライドも恥もかなぐり捨てて、

 ただただ苦しい悲痛の声が部屋を包む。



 彼女達が悲しむように、それぞれ誰もが、心に大きい感情を抱えている。


 その感情の数々が交わり合う時。


 果たして、それはどのような結果を迎えるのだろうか。



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