失恋——? -2-
「それが……っ、リトを諦めなくてはならない原因になっても、か?」
「アンタねぇ……痛いトコ突くんじゃないわよ」
はぁ、と溜息を吐いて胸騒ぎを誤魔化すリン。
否定を口にしてしまえば、リトの隣にいることはできなくなってしまうことを漠然と理解していた。
それは現在という意味でもあり、将来という意味でもある。あの場で否定を口にすれば、今は隣にいれなくなることは確実だった。
「……アンタに乗ったのよ」
小さく呟いたリンの言葉にセシアは目を見開く。
「……聞いて、いたのか?」
それはセシアが秘密裏にユザミと接触した際、ユザミに取り付けた約束のこと。それが賭けに近かったことから、セシアはリンの発言があの内容を指していることだと気づいた。
「扉、ちょっと開けたら聞こえたのよ。地獄耳だし?」
あたかも聞くつもりはなかったように言っているが、気づかれない程度に扉を開けていたことや耳に身体強化魔法をかけている時点でクロだ。
セシアはそれに小さく笑った。
「上手くいくといいわねぇ……」
遠い目で言うリン。セシアは膝を抱える腕に少しだけ力を込めた。
「上手くいくと思うか?」
「さぁ、どうかしら」
適当な返事。それが本意の返事ではないことを知っているセシアは目を伏せる。
「……大きく見積もって、五パーセントくらいじゃない? 私達がリトの隣に戻れるのは」
あまりに不透明で感覚的な可能性。しかし本当にその程度かもしれない、と納得したセシアは動かなかった。
「ちょっと、何か言いなさいよ。私達、今黙ったらとんでもないことになるわよ?」
感情を抑え込んで、おちゃらけた声色で言うリンの声は確かに震えていた。
「……後悔、しているか?」
「ばか…ッ、アンタねぇ……!」
情緒を揺さぶるセシアの発言にリンは唇を強く噛み、顔を歪ませて抑え込む。
セシアは体一つ横移動してベッドをトントン、と叩く。リンは溢れ出そうになる感情を抑え込んだまま、セシアの隣に座った。
「後悔、してるに決まってるでしょ!? どれだけ好きだと思ってんのっ、アンタだって分かってるくせに……!」
涙が零れ落ちる前に袖で拭う。感情が露わになりかけているリンを見て、セシアは足を床に下ろして自分の顔を晒した。
ぐちゃぐちゃ、という表現が正しい。目と頬は真っ赤に染まり、目に至っては若干腫れ始めている。涙で目の線がぼやけ、眉が逆八の字になって歪んでいた。