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話 -3-


「ど、どうだろうか」


 セシアがリンの髪型。ハーフツインテール。恥ずかしそうにもじもじしながら聞いてくる。


「ぐぅぅぅぅッ!」


 リンがミーシャの髪型。ちゃんと三つ編みもしていて銀色のアクセサリーをつけている。なぜか唸ってるけど。


「リト様、見てください! うなじです!」


 イルフがセシアの髪型。そこまで高くないポニーテール。バァン! と効果音がつきそうな勢いでうなじを見せてくる。


「ミーシャを見て」


 ミーシャがイルフの髪型。ストレートに銀のカチューシャと百合の花。ミーシャもストレートだからそこまで変わらないように見えるけど、百合の花がお淑やかさを演出している。


「……うん」


 一通り観察し終える。髪型ももちろん大事な要素だと思うけど元の顔が良いから、普段の印象と違う髪型でも可愛く見える。


「皆、可愛いね」


「!?」

「!?」

「あら」

「ん!」


 僕が思ったことを率直に言うとセシアとリンはたちまち顔を赤くする。イルフはニヤニヤし始めて、ミーシャは「でしょ!」とでも言わんばかりに胸を張っている。


 とんだサプライズだ。誘惑とかそういうのじゃなければ皆の可愛いは目の保養になる。


「ではリト様。この中から二人お選びください!」


 すると皆が一斉に手を前に出してくる。


 なんか、四人に一気にプロポーズされてるみたいで変な感じだ。


「二人? 何かあるの?」


「ある。とても大事」


 ミーシャも珍しくキリッとした表情。なんか悪い予感しかしないけど。


「どれくらい大事なの?」


 僕の悪い予感は的中しやすい。というより皆に対する警戒心が高いからか、察知ができてしまう。


 僕は質問を投げて何を考えているのか探ることにした。


「それはもうリト様が強くなりたいと思うぐらいに大切です」


「いやそれ結構大事だからね!? 皆いつも特訓するの嫌がるけどさ!!」


 思わぬカウンター。大ダメージだ。


「いいから早く選びなさい!」


 リンがなぜか不機嫌で急かされる。


 探ろうとしたら怒られそうだし、選びたいんだけど。でも、四人から二人を選ぶのは嫌だなあ。


「決めた。手を握ればいいの?」


「わ、私の手を」

「いえ私の手です」

「ミーシャの手」

「いいからッ!! 早くしなさいよッ!!」


 手を握らないことにはこれは続く。僕は両手を差し出して、


「はい」


 右手でセシアとリン、左手でイルフとミーシャの手を握った。


「似合ってる人を選べばいいんだよね?」


 わざわざ髪型を変えて選べと言ってるんだから似合ってる人を選べばいいはず。


 それならこれが正解だ。一番しっくり来る選択肢を選べた気がする。


 すると皆はそれぞれ真顔で目を合わせる。


「つまり」

「これは」

「四人」

「全員?」


 まさに阿吽あうんの呼吸。普段は敵対ばっかしてるのにたまに息がぴったりなのを見るあたり、いずれ仲良くできると思うんだけどなあ。


「……私は構わない」

「……あたしもいいけど?」

「……こういう手もありましたね」

「……ミーシャもいいと思う」


 な、何がいいんだ? ここまで息がぴったりだと何の意味があったのか気になる。


「これ、選ばれた人は何かあるの?」


 僕は聞く。すると皆は口並み揃えて、


「リトと寝る権利だ」

「リトと寝る権利よ」

「リト様と寝る権利です」

「リトと寝る権利」





「…………あ~~~~~~~。なるほどね?」










 僕は全員を部屋からポイッと投げ捨てた。


「部屋に入ってきたら本気で怒るからね。おやすみ」


 全く、油断も隙もあったもんじゃない。道理で大事なことだと言ってたわけだ。


 扉の外から聞こえる愚痴の数々を無視して、僕はお風呂へ向かう。


 それから眠るまで誰にも邪魔されず、僕は今までで一番穏やかに一日を過ごした。

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