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話 -1-



 Ⅰ



 三〇二号室を後にして廊下に出ると、三〇一号室の扉は若干開いていた。


 念のためノックすると約一メートル程しかない小型の石人形ゴーレムに出迎えられ、部屋に入る。


 ユザミさんは何かを考えている様子でベッドに座っていた。


「ユザミさん?」


「っ!? り、リト様!」


 声をかけるとビクッと体を震わせた後、心配そうな表情で駆け寄って来る。


「あのっ、お怪我は……」


「大丈夫です。うちに治癒魔法のスペシャリストがいるので」


 僕は傷の無い右腕を見せる。するとユザミさんはバツが悪そうな顔をして目線を伏せてしまった。


「拘束魔法と精霊の監視、ごめんなさい。体裁上どうしても拘束しないといけなかったと思うので」


 まず謝る。きっとセシア達は良い対応はしてないし拘束魔法をかけて精霊に監視させ、後は放置だったはずだ


 時間はどれくらいか分からないけど短くはない。身動きが取れないままで敵意を持つ精霊に監視されていたら誰だって嫌だと思うし、それの謝罪。


「いえっ、そうされて当然ですから……本当に申し訳ありません」


 深々と頭を下げる様子を見ると二重人格と疑ってしまう。


 聞きたいことはたくさんある。しかし今日はもう夜遅いし聞くべきではない。


 ただ、一つだけ確認しなければならないことがある。僕が部屋を訪れたのはその為だ。


「ユザミさん。一つだけ聞きたいことがあります」


 顔を上げるユザミさんが変わらず不安な表情を浮かべて僕を見つめる。


「大量猟奇殺人事件の犯人は、あなたで間違いないんですね」


「——っ」


 ユザミさんの顔が歪む。胸に手をあて、服を強く掴んで唇を噛んでいる様子からそれが本当だと理解する。


 大量猟奇殺人事件の犯人がユザミさんで間違いないと分かっている。それでも聞いたのはそれをちゃんと受け止めているかどうかを知りたかったからだ。


「それは、あなたの意思でやっていることですか?」


 これが本当に聞きたかったこと。僕にとって最も大事で、これから先どうするかを決める質問だ。


 するとユザミさんは涙を流し、嗚咽おえつを抑えながら言葉を紡ごうとした。


「分から、ないんです……」


 分からない。もしこの場にセシア達がいたら怒鳴りつけるだろう。人の命を奪っておいて、分からないなんて通じていいはずがない。


「本当はっ! ……誰も見たくなくて、誰にも触れたくなくて! ……一人でいたいんです。でも、頭の中で殺せって誰かが!!」


「分かりました」


 手が震え、瞳孔どうこうが開き、声を抑える余裕もなくなるほど彼女にとってこの出来事は不可解なものだと分かった。


 嘘は吐いていないと思う。それなら二重人格か、精神的に病を抱えているか。その二択だと思うけど低い可能性がまだ残っている。



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