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選択 -3-


「だ、大丈夫だよ! たぶん何もされないから!」


「そのたぶんが信用できないんだ!」

「そのたぶんが信用できないのよ!」


 二人からお叱りを受ける。言葉選びを間違えたようだ。


「拘束魔法を解いて精霊は残せばいい」


 ミーシャの言葉に二人は目を合わせた後、不満そうに頷いた。


 できれば二人で話したかったけど仕方ない。皆の不安を解消しないとどの道話せないし。


「ありがとう、ミーシャ」


「ん。扉も精霊に開けさせる」


 僕は頷いて立ち上がる。


 これからユザミさんと会う。でも過去を詮索したり大量猟奇殺人事件についての話はしない。


 時間はもう二十三時半だ。夜遅いし、ずっと拘束されたままのユザミさんも疲労が溜まっているだろう。何より自分を殺そうとした人達に捕らわれてるから不安なはず。


「じゃあ行ってくるね。すぐ戻ってくるから待ってて」


 歩き出して細い通路に入る瞬間だった。


「私は許さない」


 そう言葉にしたのはセシアだった。


「どんな事情があっても関係の無い民を十四人も殺している。リトも、私達が見つけられなければ死んでいたかもしれない」


 絶対にユザミさんを罰するという強い意志。意見を主張することが少ないセシアの主張は心に刻んでおかなければならない。


「同感よ。もしほだされるようなことがあれば——あたしは敵になるわ」


 思わず息を呑む。


 セシアとリンが敵になったら、なんて考えたくはない。それほど強い意志があるというのは痛いほど理解した。


「僕も彼女は罰せられるべきだと思う」


 だからこそ僕は本音を告げる。


「そうじゃないと被害に遭った方と遺族に面目めんぼくが立たないからね」


「っ、リトだって——」

「でも彼女は僕に謝った」


 セシアが紡ごうとした言葉は分かる。ただそれは重要なことじゃない。


「本当は謝れるような人なんだ。だから僕は彼女のことを理解した上で罰したい。それがもっと知れ渡るべきことなら、もっと多くの人に知られた上で罰せられてほしい」


 僕は振り返って少しだけ笑ってみせる。


「理由があるのに誰にも理解されないまま罰せられるなんて、僕は嫌だから。行ってくるね」


 きっとそう言う僕に皆はありえないと思ったかもしれない。


 でも僕の気持ちは変わらない。セシアとリンが敵になるのは怖いし、嫌だ。ほだされるようなこともないと思う。


 ただ、僕にしか知らないことがある。彼女が自分のしてしまったことに後悔して怯えながら謝る姿。


 あれを見ておいて理解しないまま罰するなんて、その方がありえない。


 僕は返事を待たずに細い通路に入り、三〇一号室へと向かった。


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