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 Ⅰ



「あっ♡ リト様ぁ♡」


 三〇三号室の扉は閉まらないようにドアストッパーで止められていて、中に入ると真っ先にイルフが甘い声で駆け寄ってくる。


 その後を続くように現れるセシア、リン、ミーシャ。


「心配かけてごめんね」


 僕は真っ先に謝る。


 この宿の使用人の正体が大量猟奇殺人犯で、僕が狙われる可能性が高かったとはいえ油断していたのは事実。


 きっと僕が部屋にいないことから気づいて探し回ってくれてたに違いない。何より大きい心配をかけてしまった。


「謝らなくていい」


「そうですよ、リトさんに落ち度はありません」


 こう言ってくれるのはありがたいけどこればっかりは素直に受け取るわけにはいかない。反省だ。


「落ち度ならあるでしょ」


 呆れと怒気を含むリンの言葉。


 リンの表情を伺うと共にセシアも同じような表情をしていることに気づく。


 それに驚きはない。ユザミさんを庇った僕の行動を怒るのはリンとセシアだということは分かっていた。


「あの女を庇った理由を言いなさい。返答によっては今からあの女を殺すわ」


 僕はセシアを見る。


「私も同意見だ」


 理由、か。ロープを外してもらって少し話したらすぐに皆が来たから、理由ありきというより咄嗟に反応したというのが正しい。


 もちろんそれで納得してもらえるとは思えない。


 理由を考える前に、僕は一つ安堵した。


「とりあえず、皆が人殺しにならなくてよかった」


 そう言葉にして自然と笑みが漏れる。


 それを見て、皆はなんとも言えない表情で僕を見つめてきた。


「リトはっ、殺されかけたんだぞ!?」


 言葉の意味をしっかり処理し終えた上でセシアが声を荒げ、僕の右腕を掴む。


 そこはイルフの治癒魔法を施されて傷はないとはいえ、ナイフが貫通していた箇所。あまりの痛みに顔が歪んでしまう。


「っ! す、すまない!! 私は、なんてことを」


「大丈夫だよ、気にしないで」


 慌てる様子のセシアを落ち着かせる。


「セシアさんの言う通りですよ。拷問に近しいことを受けておきながら私達のことを心配するなんておかしいです」


「あはは……心配かけてごめんなさい」


 今度はちゃんと頭を下げて謝る。


 とにかくユザミさんは生きているはずだ。皆が殺してないということは王国に引き渡されたということだと思うし、公開処刑をするなら時間がかかるはず。


 それならまずは皆にユザミさんのことを説明して、彼女の状況を知るのが先だ。


「彼女を庇った理由を言うね。これが庇うほどの理由じゃないと思っても踏み留まってほしい」


 僕はそう言いながら皆の横を抜けて通路から部屋に入り、椅子をベッドに向けて座る。


 皆をベッドに座るように促すと、イルフとミーシャがベッドに座った。


 セシアとリンはベッドには座らず、セシアはベッドに付属してあるヘッドボードに背中を預け、リンは逆側で腕を組んで立つ。

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