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許容か拒絶か -2-


「目的は殺すことじゃない。リトが起きるのを待つべき」


 イルフとセシアの視線がミーシャに移る。


 リトの意思を尊重するべきか、犯した罪を罰するか。四人の意見は二手に分かれていた。


「そう。そういうことね」


 怒気の表情から一転、嘲笑ちょうしょうするように笑って言うリン。


「アンタら、奴と同じね。倫理トんじゃってるんじゃないの?」


 それはリトの意思を尊重する意見を述べる二人に対しての発言。


 リトは必ずユザミを擁護ようごする。それは倉庫での行動で分かる事実。


 その行動はどんな事情であれ許されるものではない。許されてしまえば大量猟奇殺人事件の被害者と遺族を侮辱するのと同義だ。


 だからこそ、それを容認しかける二人への嫌味。それに反応したのはミーシャだった。


「あいつを殺すのはミーシャ達の役目じゃない」


 ミーシャは言う。


「私達の役目でなくとも、リトを止めるべきだ」


 どちらにも怒りはある。それは前提として、リトが擁護して国民が侮辱されるのを防ぐ為に殺す意見を持つセシアとリン。例え侮辱があるとしても国が執行するべきという意見を持つイルフとミーシャ。


 このままではらちが明かない。そう思ったセシアは再度(けな)す笑みを浮かべた。


「リトがあんなに酷いことをされているのに我慢できるのね。 所詮しょせんその程度の想いで愛を語ってたの?」


 本来リトを愛する者同士だからこそ尊重してきた相手の想い。それを貶す発言は許されるものではないにも関わらず、それを止める者はいなかった。


「どう思われても結構です。そう思うのはあなた達が子供だからですよ」


 イルフの発言はセシアとリンを馬鹿にするものだったが、二人からの返答はない。


 正確に言えば、言葉で返す必要が無かった。


 リンは命を奪うには十分すぎる魔力を注ぎ込んで魔法陣を展開する。セシアは剣を引き抜いて体に身体強化、剣に魔力を這わせる。


 リンとセシアがイルフに向かって歩き出した途端、二人は背後の大きい気配に気づいて振り返った。


「『精霊王プネヴマ』、『精霊神トゥアハ』、止めて」


----------(これは……)----------(少々手を焼)|------------《きそうですね》』

----(興奮)----(試行)----(戦闘)


 全精霊の中で序列二位と三位の称号を持つ精霊王プネヴマ精霊神トゥアハ


 戦意の無いイルフを後に回し、リンとセシアは振り返って戦闘態勢に入る。



精霊王プネヴマ如きが私を止められると思うなよ」

精霊神トゥアハ如きであたしが止まると思ってんの?」





 ——この世界で最も戦ってはならない者同士の戦いが、始まる。





 と、思われた瞬間。部屋の扉を開く音。


「あっ♡ リト様ぁ♡」


「っ!?」

「っ!?」

「っ!?」


 細い通路の先にいたイルフが部屋に入ってきたリトに気づき、語尾にハートがつきそうな甘い声で玄関へと向かう。


 セシアは剣を腰にしまい、リンは魔法陣を閉じ、ミーシャは精霊王プネヴマ精霊神トゥアハを精霊界に返して、それぞれが玄関へと出迎える。



 突如現れたリトによって、世界は二度目の滅亡の危機をまぬがれた。




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