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許容か拒絶か -1-



 Ⅲ



 その日の夜、人智帝国ブリテンは騒然そうぜんとしていた。


 中央通りから二キロメートルほど離れた過疎地域にある大きい倉庫が破壊される事件が発生。


 石人形ゴーレムの目撃情報と破壊音が結び付けられ精霊使いであるリーシャに注目が集まったが、国王はそれを容認。


 理由として「大量猟奇殺人犯を捕縛する為の必要な手段だった」と国王声明が出された。それは緊急事態発生時にのみ発令される最高位の伝達手段。


 それと同時に大量猟奇殺人犯の身柄を確保しているとして、国民は心に安堵を抱いていた。


 その一連の事件が落ち着いたのは二十一時頃。それから一時間が経過した二十二時、セシア達は三〇三号室に集まっていた。


「……」

「……」

「……」

「……」


 まさに一発触発の雰囲気。もし事件に関してふざけた発言があればすぐさま彼女達は自分の武器を手にするだろう。


 それほど彼女達の間に確執が生じていた。


「リト様にゆだねましょう」


 その発言は決してふざけたものではない。しかし怒りを買うには十分すぎる発言。


 セシアとリンがイルフを睨みつける。


「ふざけるな」

「ふざけないで」


 それはリトの意思が既に決まっているからこその反応。


 大量猟奇殺人犯ユザミ・テトライアの身柄は確保された。しかしそれは人智帝国ブリテンが管轄かんかつしていることではなく、生命国宝の四人が身柄を確保している。


 ユザミが拘束・監禁されているのは三〇一号室。これは生命国宝の権力を行使して国王に猶予を貰い、四人が確保しているからだ。


「お前が何を言っているか分かっているのか?」


 セシアの怒りが当然のものであることをイルフは理解している。


「何ら罪の無い十四人の国民を殺し、挙句の果てにリトに手を出した。赦免しゃめんの余地は無い」


「同感ね。リトの意思関係無しに殺すべきだった。誰かさんのせいで殺し損ねたけどね」


 あからさまな皮肉。イルフはそれに対応しない。


「どうあれ彼女に抵抗する様子は見えませんでした。リト様が起きてから対応しても遅くないはずです」


 リトの容態は安定していた。多量出血や数か所の骨折はどれも致命傷とはならず、イルフの治癒魔法を施したことで現在は三〇二号室で眠っている。


「リトが起きたら殺せないって言ってんのよ」


 リトにユザミの処遇を任せれば、ユザミがリトに対して犯した罪は許されてしまう。


 倉庫で見せたリトの咄嗟の行動。圧倒的な殺意の中でも自身が壁になるように立ちはだかり、結果的にユザミは救われた。


 その事実が既にリトの意思を示している。



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