拷問 -4-
『キュッキュッ』
「——ッ」
そう考えていると何かの鳴き声が倉庫に響く。
その主に視界を移す。そこにいたのは丸くふわふわな動物。
「伏せてッッ!!」
「——へ?」
時すでに遅し。
耳に劈く破壊音と共に倉庫の壁が吹き飛ぶ。壁をぶち破って入ってきたのは三メートルはあるだろう石人形。
白くふわふわな動物と石人形はミーシャの精霊だ。
「皆ッ! 待っ——」
石人形に乗っていたリン達。破壊された壁で巻き起こった風塵が止む頃、皆は石人形の肩から降りて状況を把握する。
僕の姿を見て、驚愕の表情。次に少し離れて隣にいたユザミさんを見た途端、表情が夥しいほどの殺意に塗り潰されるのは一瞬だった。
僕の制止の声を聞かず剣を抜いて走り出すセシア。リンは詠唱を唱え魔法陣を展開。ミーシャは石人形に命令する。
三人の殺意に溢れた行動を察知した僕はユザミさんに駆け寄った。
「——ッ!!」
ユザミさんの前、盾になるように立つ僕。
目の前には覇気のある表情のセシアが剣を振り下ろし、石人形が大きい岩の拳を振り翳す。その間を狙う炎の槍の形をした魔法が飛んできていた。
全てがスローに見えたと同時に察する。
これらの攻撃は全て途中で止まれるものではない。
僕は、死ぬ。
「————」
思わず目を瞑って数秒。襲い来るはずの絶命の瞬間はまだ訪れず、ゆっくりと目を開いた。
「落ち着いてくださいッ!」
僕の目の前に展開される防御壁。これは——イルフの防御魔法。
助かった。イルフの防御魔法がなければ僕は絶対に絶命していただろう。
「あ、れ——?」
そう安堵した瞬間、視界が揺れる。
ドク、ドクと自分の心臓の音が聞こえる。気づけば体が地面に打ち付けられていて、ゆっくりと暗くなっていく視界。
僕の意識は既に限界を迎えていた。