拷問 -2-
「私ね、強いってとても素晴らしいことだと思うんです」
「イ゛ッ」
「だって侵されることがないんですよ。辛くないし、痛くもない」
「ギッ」
「我ながらとても頑張ったと思うんです。何度も死んでしまえたらと思ったのに、耐えて、耐えて、耐えて」
「ア゛ッ」
「耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて」
「ッ」
「耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて」
何度も、何度も、何度も、何度も、鈍い痛みが体を襲う。
意識が飛びそうになるのを新たな痛みが無理やり覚ます。その繰り返しが何度も続く。
「やーーーーーっと、あなたはいなくなった。だからね、私思ったんです。やっとあの部屋から逃げ出せる! あの痛みから、あの苦しみから!! もう侵されることなく過ごせる! なんて、外に出てみたら」
高ぶる声。話すことに夢中なのか鈍器が振り下ろされることはなく、新たな痛みは襲ってこない。僕は意識を保つので精一杯だった。
「蛆虫みたいにいっぱいあなたがいた。あぁもう、あの時の恐怖といったら、今までの痛みだとか苦しみだとか比にならないほどでして!」
タン、タンと歩き回る音。不規則に響くそれはただ歩いているのではなく時に早く時に遅くステップを踏んで歩いているのが分かった。
「だからね、私、思ったんです。あぁ、この人達は殺さないといけないんだって」
シャン、と金属音が擦れる音。僕はそれが鞘から刃物を引き抜く音だということに気づいた。
「これは、ただそれだけの話」
ああ、分かる。きっと彼女はそのナイフを振り上げて、今——
「ぎがあ゛あ゛あああああ゛あぁあああッッ!!!」
今までとは比にならない痛み。
熱い、熱い、熱い。 痛みが熱を帯びて、ナイフが僕の右前腕を貫通している。何も見えなくても分かる、動かさなくても分かる。
この痛みは、ダメだ。
「この火傷、覚えてますか? って、見えないですよね。今取ってあげますから」
何を言っているのかなんてどうでもよかった。この痛みが僕の全てを支配していて、それ以外のことなんか考えられるわけがない。
熱の帯びた激痛を抑え込もうとしていると、僕の目に覆いかぶさっていたものが外された。
目の前にあるのはユザミさんの顔。特徴的な火傷の痕が顔右半分の額から右目を覆うほどまで残っている。
「これ、《《お義兄さん》》が——」
僕とユザミさんの目が合う。小さく微笑んでいたユザミさんは一転して目を見開き、驚愕の表情と共に離れた。
目が、熱い。これは——皆と出会った時にも感じた熱。
——スキルが、発動する。