リーシャと寝泊まり -3-
「じーー」
「……どうしたの?」
ドライヤーをする間、じっと見つめてくるミーシャ。思わず声をかける。
「リトはやっぱりカッコいい」
思わず手を止めてしまう。
好きと言われればそれはスキルがかかっているから、と思考が繋がる。カッコいいと言われれば、それはどうなんだろう。
好きだからカッコよく見えるのだろうか。
「わぷっ」
返事に困った僕は一瞬だけミーシャの顔にドライヤをあてた。
ドライヤーは止まり、ミーシャがジト目で見てくる。
「あはは」
思わず笑い声が漏れてしまう。
それを見たミーシャはきょとんとしていて、次に顔を俯かせた。
「ミーシャは」
いつもと変わらない声量、変わらない声色。なのにどこか真剣さを感じる声。
「ミーシャはセシアみたいに胸が大きくない」
いきなり何を言うんだ。そう思ったけど口には出さない。きっと続きがある。
「リンみたいに特徴的でもない。イルフみたいに積極的でもない」
声量も声色も変わらない。けどそれは確かに真剣で、そして悲しみを帯びている。
少し間が空いて、
「ミーシャは皆みたいに可愛くない。だから怖い」
ミーシャは小さく呟いた。目の前にいる僕に言っているはずなのに、僕に届くか届かないかの細々とした声。
「リトはカッコいいから、皆が全力でリトを奪おうとする。ミーシャがやることは皆がもう全部やってて、リトをドキドキさせることもできない」
これはミーシャが抱え続けてきた不安か。きっと考え込んでて、何かをきっかけに爆発してしまっている。
「選ぶのは一人じゃないとダメ? ミーシャは二人目でも、三人目でも、四人目でもいい。愛してくれるなら一日置きでも二日置きでもいい」
僕はなんてことを言わせてしまっているのだろう。
これがミーシャの本音。僕に好きにさせられて、他の皆がいるから不安で、一緒にいれるなら他の人がいてもいいと受け入れるほどに不安定なんだ。
僕はその不安を解消することができない。それが僕の罪で、償わなければいけないものだ。
「僕ね、皆と付き合うって考えたことないんだ」
本音で伝えてくれたのだから本音で返すのが筋。僕が思ったことを全部伝えよう。
「僕にとって皆は可愛くて、綺麗で、とても魅力的で、高嶺の花。スキルを発動してなかったら憧れ続ける存在だった」
「そんなことない!」
なんて泣きそうな顔をするんだ、って。そうさせているのは僕なのにな。僕はこの泣き顔を背負っていかないといけない。
「ミーシャは! ……絶対リトのことを好きになってた。スキルなんか関係ない!」
「……ミーシャ?」
「スキルなんかっ、関係、ないもん……」
俯くミーシャ。ぽたぽたと涙が零れ、太腿の間に置いてある手を濡らす。
スキルなんか関係ないと僕は思えない。こんな魅力的な人達が僕を好いてくれるなんてありえないと思ってしまっているから。
でもそんな答えは必要ない。僕はそんなことより伝えたいことがある。