リーシャと寝泊まり -1-
僕は天井を見上げる。
「……」
場所は宿の三〇二号室、つまり自室。大の字でベッドに寝転がっている。
王城を後にして部屋に帰ってきてからこんな感じだ。話があまり頭に入ってこなくて皆には迷惑をかけたと思う。
リンが買ってきてくれたご飯を今日の寝泊まり当番であるミーシャと食べて、お風呂に入り、今はミーシャがお風呂に入っている。それ待ちだ。
「どう、しようかな」
たぶんフェンデルさんの願いは叶わない。あそこまで民を考える強い意思で公開処刑しようとしているのだから、僕程度の進言じゃどうにもならない。
セシア達ならきっと止められると思う。だけどそれは根本的な解決じゃない。
「フェンデルさんに報告しないとな」
正直に言うと処刑は免れないだろう。刑場で処刑されるか公開で処刑されるかの違いだ。
無関係の人を十三人も殺害するなんて酷すぎる。処刑を賛成とは言えないけれど、そう決まったとしても仕方ないと僕は思う。
だけど、まずは捕えないと。スキルを持っているかどうか判断しなければ話にならない。集中すべきはそれで、処刑のことはまた考えよう。
「何を?」
ひょこっ、と視界の外から覗き込むように現れるミーシャ。
ぽたぽたと髪から雫が垂れてくる。ちゃんと拭いてないな。
「冷たいよ、ミーシャ。ちゃんと拭きなさい」
「ドライヤーしてもらうから絞って終わりにした」
手に持っていたドライヤーを胸の前に持ってくる。
ドライヤーするにしても滴り落ちるから拭いた方がいい気が。そういうものなのかな。
「濡れてる方がドライヤーしてもらえる時間が増える」
そういうことか。行動もそうだし、それを伝えてくるのもミーシャらしい。
「僕が拭くからタオル持っておいで」
「……!!」
眉が上がり、見るからにご機嫌になるミーシャ。ぱたぱたと歩いて廊下に消え、手元にタオルを持って帰ってくる。
僕は立ち上がって椅子の後ろに立った。
「ん」
「え」
ミーシャはドライヤーをテーブルの上に置き、椅子に座って腰を上げると共に持ち上げる。半回転して僕と向き合い、再度座った。
「こ、こっち向くの?」
「ダメ?」
ダメ、ではないけど……やりにくいな。
もちろん髪を拭くのもそうだし、視線が合ったりしたらと思うとそう感じる。
「まあ……いっか」
「やった」
ミーシャは顔を少しあげて太腿の間に手を置き、前傾姿勢になる。
その行動で僕は良くないことに気づいてしまった。