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アシュテルゼン王 -3-


「成程。言い分は理解した」


 アシュテルゼン王の中で結論は出ているのか、迷っている様子はない。


 僕の言っていることは完全に理解した上で、結論があるといった顔だ。


「単刀直入に言おう。話にならない」


「……っ」


 その言葉からは怒気を感じる。温厚だった印象は一切なく、感じられるのは威圧感。


「スキルの存在は分かった。そうでないと生命国宝ともあろう四人が一般人に従っている理由がない。そしてスキルの効力も理解した」


「でしたら——」

「君は」


 アシュテルゼン王が言葉を遮る。



「君は、同じことを遺族の前で言えるかね?」



 あまりに的確で無慈悲な言葉。一切反論できる余地のないそれに僕は視線を伏せた。


「例え心神喪失しんしんそうしつだとしても奪った命の尊さは変わらない。奪われた遺族の悲痛と憤怒も、変わらない。君は奴を止められるかもしれないと言ったね」


 僕は小さく頷く。


「それは奴の人生を背負うということ。それだけではない、奴が奪った十三人の命と、関係する遺族の痛みと苦しみを背負うということだ」


 再度、小さく頷く。


「君にそれができるか?」


 できる、はずがない。僕はスキルで人生を変えてしまった皆の人生でさえ背負うことができていないのに、大量猟奇殺人犯の人生を背負うことなんてできるはずがない。


「……申し訳、ありません」


 僕は謝ることしかできなかった。


「そもそもこれは大量猟奇殺人犯がスキルを持っていて、心神喪失だった場合の話。それでも救いたいと言うのならば」


 アシュテルゼン王が僕を睨む。


「十三人の遺族から奴を救うことの許可でも貰うのだな。もしそれをやるほどの覚悟があるのならば遺族方の所在を教えよう」


 それは馬鹿なことを言った僕に対する慈悲だと感じた。


 どの道、被害者の遺族にそんなことができるはずもない。


依頼クエストは捕縛と引き渡しだ。受諾した以上、遂行してもらおう」


「……はい」


 僕が了承を返すとアシュテルゼン王は立ち上がり、部屋を後にする。


 入れ替わりで入ってきた案内人に促され、僕は王城を後にするのだった。




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