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リンと寝泊まり -5-


「……っ」


 今、リトが目を開けたらどう思われてしまうのだろう。


 きっと驚く。何をしているのか、と聞く。その後は、怒る? 呆然とする? もしかしたら嫌われてしまうかも。


 でも、もし。あたしの姿を見て、欲情したら——


「——」


 なんて、あるはずない。だってリトだもん。あたし達のことを大切に思ってくれて、手を出さないって心に誓ってる。だから手を出さないのは分かってる。


 でも、万が一欲情したら。


「違う。あたしが欲情してるんだ」


「……?」


 ぴくっ、とリトの体が揺れる。


 あまりに小さい声だったから内容は聞こえていないはず。でも声は聞こえたから体が反応した、みたいな。


 リトにとっては声をかけるまでもない、と終わった些細な出来事。


 ただそれは、あたしの欲情を加速させた。


「————」


 あたしは体に巻いていたバスタオルを脱いだ。


「——————っ」


 あたしはきっと変態だ。目を瞑って押さえておいてと言っておきながら、リトの前で体を晒している。


 リトはあたしを見ない。絶対に、見ない。そういう確証があるからこそこうしていると分かっていても、想像してしまう。


 もし見られてしまったら、あたしは——


「——ぁ」


 きっと抑えてきた何もかもが壊れてしまう。それがリトの想いを踏みにじり、裏切ることだと分かっていても我慢が効かないと分かってしまう。


 これ以上は、ダメだ。


「……リン? 大丈夫?」


「っ!!」


 心配になったのか声をかけてくるリトにあたしはすぐにバスタオルを手に取った。


 足音を立てずにケース前へ。そこから足早に細い廊下に入って脱衣所の前へ着く。


「もう大丈夫よ!」


 脱衣所に入り、扉を閉める。


 あたしは死んでしまいそうなほど早い心臓の鼓動を感じ取りながら腰を下ろした。


「……最低だ」


 あたしが行動を起こさなかったのはその気持ちが強かったからだ。


 リトの想いを知っている。それでもあたしは想いを裏切るようなことをしかけた。


 あぁ、もう。好きにさせたんだから情欲も将来も全部責任取りなさいって言えたらどれだけ楽なんだろう。


 それは他の皆も裏切る行為な訳で。あたし達はリトのことが好きすぎるから、スキルが解除されるまで性的接触をしないという約束をしている。


 約束をしたからには守る。それは皆も同じ気持ちだ。でも、一つだけ例外がある。


「どうしたらいいんだろう」


 リトが我慢できなくなった時、それを受け入れるのはいい。それが例外。だから、皆は誘惑するのだ。


「この性格直したいなぁ」


 ホント、プライド高いのも考えものね。リトがあたしの好意に気づいているって分かってるのに好きも言えないんだから。


「……早く出よ」


 とりあえず、今日はもうダメだ。これ以上リトと接すると本気で手を出してしまいかねない。


 あたしは体を拭きながら、無理やり魔法の研究について考えること

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