リンと寝泊まり -4-
Ⅱ
「あ、あたしが取りに行くから! ベッドに座って目瞑って、手で隠しなさい!」
約一か月リトと旅してきた中で、あたしは過去一焦ってる。
お風呂に入って、全部終わらせた後。脱衣所に戻って髪を拭いたところで着替えがないことに気づく。
着替えがなければ当然部屋に戻れない。あたし以外にケースは持てない。リトに持ってきてもらうのはすっごく恥ずかしいけど、問題がある。
今日はベッドで一緒に寝る。だから気合い入れた下着じゃないといけない。もしかしたらもしかしちゃう日が来るかもしれないと思って持ってきているお気に入りの下着がある。それを見られるのも嫌。
「も、もういいわね!?」
「いいよー!」
部屋から出て行ってもらうわけにもいかないし、持ってきてもらうわけにもいかない。あたしはリトが部屋にいる中で取りに行かないといけないんだ。
「大丈夫、大丈夫」
一応、バスタオルを巻いた体を念のため確認する。
恥ずかしいところは見えてないはず。おかしいところも、ない。
あたしは脱衣所を忍び足で出た。
「……っ」
脱衣所は玄関に通じる細い廊下の途中にある。細い廊下を歩いて、顔だけ出して部屋を確認する。
リトがベッドに座って、下を向いて目を押さえている。
あたしはすぐにケースの前に寄って魔力を流すと、ケースが自動で開いた。
「ふ……」
チラッと横目でリトを確認する。相変わらず目を押さえて微動だにしていない。
箱の中にあるのは大量の魔法具。杖だったりポーションだったり、魔法の研究ができる道具が一通り揃っている。
魔法の研究は勝手にやって頂戴、と言ったことがあるけれど、あたしは魔法の研究を欠かしたことはない。魔法は未知、まだまだ分かっていないことが多い。
って今はそんなことはどうでもいいのよ。早く着替えを取って戻らないと。
「……『開門』」
小さく詠唱を唱える。するとスーツの中が形を変え、固定されている下着が現れる。
うん、大丈夫。可愛いし、ちゃんと——エロい、はず。固定してたから形崩れもしてないし、綺麗な状態。
あたしは適当に着替えを取り、もう一度リトを確認した。やっぱり微動だにしていない。
「……」
リトは絶対に目から手を離さないし、盗み見ることをしない。そういったことに決意が固いのを知っている。
だから、リトは絶対に見ない。
それがあたしの思考を大きく揺るがせた。
「——っ」
あたしはリトの前に立つ。
「————っ」
ゾクッ。
足先から頭の先まで身震いが伝う。
こんな感覚、今まで一度も感じたことがない。