リンと寝泊まり -3-
「り、リトー!」
リンが風呂に入ってから三十分ほど。僕を呼ぶ声がして脱衣所の前に行く。
脱衣所の扉、樹脂パネルの先に肌色と赤色が見える。僕は慌てて目を逸らした。
「どうしたの?」
「その……着替え忘れちゃったの! あたしのバッグ持てない?」
思い返せば風呂に行く前にリンは着替えを持ってなかった。
とはいえ……どうしよう。実はリンのバッグを持っていくのは不可能なのだ。
「絶対に無理です」
「そうよね……どうしよう。き、今日はちゃんとしたやつじゃないと……」
何やらごにょごにょ言っているリン。
僕は部屋に戻り、片隅に置いてある特大激重軽合金バッグを見る。
「……うん、無理だ」
縦二メートルほど、横一メートルほど、高さ五十センチほど。金と黒の煌びやかな装飾がついていて、高級感溢れるケース。それがリンの特大激重軽合金バッグだ。
僕達の荷物は基本ミーシャに任せている。ミーシャは精霊界というところから精霊を呼び出しており、その精霊界に荷物を預けて移動している。
軽く持ち上げようとしてみるけどビクともしない。何をこんなに持っているんだか。
「あ、あたしが取りに行くから! ベッドに座って目瞑って、手で隠しなさい!」
それなら部屋から出た方が、と思ったけど女性がいたら問題だしな。
僕は大人しくベッドに座り、目を瞑って手で隠した。