リンと寝泊まり -2-
「もうっ、出ていきなさい! 何時だと思ってるのよ!」
イルフとの対決が円満に終わらなかったのか、リンの声が響く。
「はーい、リト様のこと大好きすぎて一緒にいたいですもんね!」
「す、すすっ、好きじゃないわよ!!!」
足早に言い残して部屋を後にするイルフ。とばっちりを食らいたくないと後を追うセシアとミーシャ。
「フーッ! フーッ!」
「……あはは」
スキルがかかっているからリンもきっと僕のことを好きだと思う。
だけど好きじゃないと言うから、僕もそう接さないといけなくて。ああいうことを言われると僕も気まずい。
「あれは! アイツの妄言だから本気にしないことね! わかった!?」
三人が出ていった扉を指さして、顔を赤くして言うリン。
「うん、分かってるよ」
「——っ」
リンが僕に好きじゃない旨を伝えて、僕は頷く。するとリンはちょっと悲しい表情をして頷くんだ。
「そう、それならよかったわ」
それを気取られないように視線を逸らして言うリン。
きっと傷つけてしまっているけどリンが好きじゃないと言っている以上、僕がそれを否定するわけにはいかない。
傷つくくらいなら好きとは言わずとも気になってるくらいでいいのに、と思ったり。
「頭冷やしてくるわ。先にお風呂入るけど、いい?」
「うん。行ってらっしゃい」
そのまま背を向けて細い廊下に姿を消すリン。
僕はドライヤーを拾ってテーブルの上に置いた。
「……リンにもドライヤーするか聞いてみようかな」
イルフと取っ組み合いをしていたことでリンはドライヤーのことを知らないだろう。お風呂から出てきたら、聞いてみよう。