どうしてこうなったのか -2-
「リン。今日の寝泊まりはミーシャの番だったはずだ。寝泊まり当番以外は部屋に訪れない約束だっただろう?」
「一番最初に破ったのは昨日のミーシャよ。それにアンタだって来てるじゃない」
「ば、ばっ、馬鹿者! 私はやましいことが起きてないか確認しにきただけだ!」
「あたしもよー。ほら、ミーシャがくっついてたから引きはがしてるじゃない」
そう、世界最強達に教えを乞うたのが全ての間違いだったのだ。
恋慕スキルを得ていることを知るまで、僕はあらゆる女性のコネを使って世界最強達に接触した。
一人目がセシア、二人目がリン、三人目がミーシャ、そして四人目が——
「失礼します。あ、皆さんもうお揃いだったのですね」
部屋に入ってきた妖精のイルフ・アーシェスリア。
金色の髪がカールしながら背中まで伸びている。身長は一五三センチほどで、長い耳と神秘的な雰囲気から妖精の一族だと分かる。
言葉遣いや所作は丁寧だけど言うことやることは積極性に溢れている。
「よい、しょと」
「今度はなんであんたが膝の間に座るのよ!?」
すたすたと足早に僕の膝の間に座るイルフ。
「私は決してどきませんから」
そう、僕は恋慕スキルで彼女達を惚れさせてしまったのだ。
それを惚れさせるスキルだと確証を得るまでに四人。言ってしまえば彼女達は恋慕スキルの——いや、僕の被害者。
「ふぅん? あたしがそこを奪ってもいいのよ」
などど回想していたら不穏な空気が流れている。
「争うことが許されるなら、そこは私の場所だ」
「ミーシャからそこを奪うなら——壊す」
僕はこれを知っている。
この流れ——宿を木っ端微塵にして弁償の流れだ。
「——秘剣『斬切ノ舞』」
「——燃やし尽くしなさい『轟炎』!」
「——召喚『水ノ精霊・ウンディーネ』」
「——『|拒絶の盾よ、私を守って《プロスタテ・アスパイダ》』
ドガァァァァァァン、と大きい爆発音を響かせる部屋。爆風で宙に飛ばされる僕。
これで泊まった宿が破壊されるのは何回目だろうか。街を訪れる度、こうなるのだ。
「もう嫌だああああああ!!! 僕はッ、強くなりたかっただけなのにい!!」
——これは惚れさせスキル使いである僕が、超チート級美少女達に求愛されながらも恋慕を解く物語である。