滅びなかった世界線 -2-
「ですが依頼目標は確保では? 行動されなければ捕まえられませんよ」
これはイルフの言う通りでもある。けどたぶんセシアが言い返す。
「私は民を不安にさせる輩が許せない。捕まえるより民の安全の方を優先するべきだ」
「……確かに、そうですね」
どうやらイルフも納得してくれたようだ。
もしかしたらここら辺にはもういなくなってるかもしれないし、長い旅になるかもしれない。覚悟しておこう。
「ま、そういうことで。何か質問は?」
誰も何も言わない。
僕はベッドから体を起こして言うことにした。
「皆、ちょっときて」
そういうと疑問に思いながらも皆がベッドの前に来る。
ベッドの左隣にミーシャ、左前にセシア、正面にリン、右前にイルフといった感じ。
「四人共分かれていくのはやめてほしい」
きょとん、とした表情で四人が見つめてくる。
「二手に分かれてほしいんだ」
伝え方を変えて意図を理解してくれたのか、リンは特に不機嫌を顔に出す。
「一人じゃ危険って言いたいのかしら」
もちろん彼女達は僕の気持ちをわかっていても受け入れようとはしない。
世界最強と謳われている。負けたことがない。その要素が自分の心配をなくしてしまっている。
「リト、心配しすぎだ。イルフならまだしも私達なら大丈夫だ」
「あら、私も大丈夫ですよ。防御魔法のスペシャリストでもありますから」
「召喚魔法士、もはや一人じゃない」
頷いてくれるならそれでよかったけど、ちゃんと理由も話さないとだめか。
「皆も知ってると思うけど相手はスキル持ちかもしれない」
それだけが僕の懸念点だった。
彼女達が戦闘で負けるとは思えない。イルフに関しても防御魔法が一級品で多少強い人にも負けないだろう。
「僕は恋慕スキルを持ってる。スキルがどれだけ強力なのかこの身で知ってるんだ。スキルについてあまり分かってない以上、一人で行かせるなんてことはできない」
「スキル持ってても勝てるって言ってるのよ」
リンの声は怒りを含んでいて、僕もちょっと驚く。
彼女達と一緒にいる約一か月。本気で怒られたことはなかった。
でも僕は退く訳にはいかない。
「民のことも考えて、各自で行動させてもらえないだろうか?」
他の皆もセシアと同じ意見なのか、じっと僕を見つめてくる。
僕は全て言うことにした。