滅びなかった世界線 -1-
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
大きな溜息と共に全身の脱力感が止まらない。
あれから僕の行動は誰よりも速かった。
まず土下座。僕が悪くないとかそんなものは関係ない。土下座だ。しかしアレがそんなもので止まるわけがないと判断した僕は皆を褒めまくった。
セシアには、クールで凛々しい普段の姿も照れて恥ずかしがり、鎧に顔を隠す姿も可愛い。頑張って声をかけてくれてるのが伝わってそんなセシアの頑張り様に心を癒されてるよありがとう、と。
リンには、いつもツンツンしてるけど内心僕のことを一番考えてくれていて揺れるサイドテールや可愛らしい八重歯が見える度にこっちも笑顔になる。宿を取ってくれたりスキル解除に親身になってくれていつも助かってるよありがとう、と。
ミーシャには、無表情で接触が少なくてもふとした時の行動で好きなんだなって伝わってきて、なんだかんだミーシャが礼儀正しくて良い子なの知ってるからこれからもよろしくねありがとう、と。
イルフには威嚇した。
そこから最後の一押し。
『皆ッ! やめてくれたらッ!! 一回だけなら一緒にベッドで寝るからァ!!』
それが功を成したのか、三人は落ち着いてくれた。世界滅亡エンドは回避だ。
それから四人を宿の総支配人に謝罪しに行き、弁償と迷惑料を払ってもらった。
生命国宝の四人だったからか丁寧に対応してもらえて部屋も変わった。今の部屋は三〇二号室だ。
あれからしばらく時間が過ぎ、十六時半。全員が三〇二号室に集まって僕はベッドにうつ伏せ。
「そろそろ計画を立てるわよ」
ベッドとベッドの間にあるテーブルで皆が話し合うみたいだ。
「被害現場は多岐に渡るけど、つい最近の犯行がここら辺の近く。とりあえずしばらくはここら辺を歩き回るわ」
「歩き回るだけでいいのか?」
セシアが若干驚きを感じられる声色で言う。
「私達が来たと話題になっていますから犯人も行動を起こすとは考えにくいですね」
イルフの言う通りだ。あんな盛大な歓迎があったということは相当話題になってたということ。
ここら辺にいるなら知らないはずがない。
「歩き回る必要、ある?」
「新しい情報がブリテンに届いたら宿に来るようになってるけど、私達が歩き回るだけで犯行の抑止になるのよ。聞き込みもできるし、ファンサにもなるし、いいこと尽くしよ」
ファンサと聞くとそんなこと必要あるのかって思う人もいるかもしれない。
生命国宝はそれこそ尊敬の対象。一つの分野で超越的な力を持つ最強だ。
それだけでファンがいるし、それに尊敬する人からサービスがあれば頑張ろうと思う人がいるのも当然。それを見越しての優しさだ。