イルフと寝泊まり -3-
それから僕は気合いでお風呂を済ませ、イルフも後に続いて済ます。
お互い自由な時間を過ごしながら雑談をしたりして気づけば時刻は二十三時。
行動するのは夜からといえど昼には話し合いがあるだろうし、早めに寝ておいた方がいい。
「イルフ? そろそろ寝る?」
ベッドでうつ伏せに寝転がりながら足をぱたぱたさせるイルフ。
寝間着姿でお淑やかさというより可憐な少女という感じ。また別の雰囲気なのに可愛らしいのはイルフだからだろう。
「あら、それはどういう意味でしょうか? 時間ですか? 場所ですか?」
「……分かってるでしょ」
セシアは本当に勘違いするタイプだけど、イルフは勘違いしてなくても聞いてくるタイプだ。ニヤけ顔で。
「はい、じゃあ一緒のベッドで寝ましょう」
「別々のぉ!! ベッドで!! 寝る!?」
力強く言うと観念したのか頬を膨らませてベッドから起き上がるイルフ。
「もう夜も遅いですし、寝ましょう。電気消しますよ」
どうやら電気を消しに行ってくれたようで僕はそれに甘えて先にベッドに入った。
パチン、とスイッチの音と共に電気が消える。
すたすたという足音も聞こえて離れていくかと思った、その瞬間。
「えっ、な、なんっ!? ——ふむぐっ!?」
何かが覆い被さる。
犯人は分かっている。こんなことをするのは一人しかいないというより、この部屋には僕以外にイルフしかいない。
「うぐっ、むぐ」
イルフは僕に覆い被さると素早く馬乗りになった。その後すぐに僕の腕を掴み、頭の上に持っていく。
頭の上に持っていかれた両手はイルフの左手で押さえつけられ、びくともしない。きっと魔力の身体強化だ。
僕の首の横にイルフの右肘が置いてあり、右手で僕の口は塞がれた。
「落ち着いてください。あまりうるさくされたら、リンさん達が来ちゃうじゃないですかぁ」
落ち着ける、わけがない。イルフの寝泊まり当番はこれで八回目くらいだけど、今までこんなことはなかったのに。
「落ち着いてくれたら手を離しますよ」
暴れる僕と違って冷静な声色のイルフ。
その様子と発言から僕は一旦落ち着くことにして、暴れるのをやめると口から手が離される。
「い、イルフ? 本当にやめ——」
「私ね」
僕の声はイルフの言葉と人差し指を口に当てられて遮られる。