どうしてこうなったのか -1-
僕は弱かった。
幼い頃から全てにおいて才能ナシ。
剣術、ダメ。魔法、ダメ。武術、ダメ。
自信が持てず、気弱な態度からいじめられることが多かった。
だからどうにかして強くなりたかった。馬鹿にしてきた人間を見返したかった。
そんな中、十八歳の誕生日——全人類のうち数人しか確認されていない超希少スキルが発現した。
その日から街行く女の人が僕を目で追う。
連絡先を聞かれ、ご飯に誘われ、挙句の果てに誘拐されそうになったことも。
おかしいとは思った。しかし超希少スキルだとは思わなくて、「モテ期が来たのかもな~」と思ってた。あの日の自分を殴りたい。
「リト? どうしたの?」
僕の膝の間に座っている少女が聞いてくる。
「ちょっと昔のことを考えてるんだ」
彼女はミーシャ・ペトラ。十六歳の身長は一四九センチ。
銀色の髪が背中まであり、頭のてっぺんから左耳の前に三つ編みのヘアスタイル。同じ色の眉毛に長い睫毛、垂れ気味な金色の瞳。小ぶりな朱色の唇。
華奢な体をしていて幼くみえるのに謎の色気があり、口数が少ないというより淡々と話す女の子。
「昔のことなんていい。ミーシャのことを考えて」
「はは……そろそろリンが来るから離れた方が——」
と、言いかけたところで部屋の扉が開く。
「リト、おは——ってやっぱりくっついてる! 離れなさいッ!」
僕の服を掴むもリンに引っ張られて引きはがされるミーシャ。
リンのことも紹介しておこう。
リン・フィセンシュリオル。十七歳の身長は一六二センチ。
赤色の髪がサイドアップテールにされていて肩の長さほどまである。吊り目がちで表情から強気な性格なのが分かり、実際強気だ。口を開くと見える八重歯が可愛らしく、スタイルが良い。
よし、昔の回想を続けよう。
この超希少スキル——恋慕スキルを知らないまま僕はとある行動をした。
それが世界最強達に教えを乞うこと。全部ダメな僕でも強い人達に鍛えてもらえれば強くなれるのでは、という浅はかな考え。
今思えば僕如きが世界最強の人達に教えてもらえるわけがない。
謎のモテ期がきて自信がついていたからこその、馬鹿な行動。
そう、それが全ての間違いの始まりだった——。
「失礼する——……ふん」
威厳のある声で部屋に入ってきてリンとミーシャからぷいっと顔を逸らすのは、神聖ヴィロナス王国の伝説名誉騎士——セシア・テレスリア。
二十歳で背中まで伸びる黒髪のポニーテール。横の髪が胸元まであり、身長は一七二センチだったか。クールな印象をしていて忠誠心が高く、職業は騎士。
出るところは出ていて引っ込むところは引っ込んでいる。基本的に鎧がデフォルトなのか今日も鎧を着用していた。