イルフと寝泊まり -1-
ふに、と突かれる感触に意識が覚め、ゆっくりと目を開ける。
「——?」
目の前には一、二、三、四……四人の顔がドアップ。それぞれが顔を赤らめながら別々の表情で僕の顔を覗いていた。
「——どわぁ!?」
思わず飛び起きる。危うくベッドから落ちそうになるも踏ん張り、僕の顔を覗き込んでた四人を見る。
「か、帰ってきてたんだね」
表情を確認する。
セシアは恥ずかしそうに顔を赤らめている。
リンは頬を赤く染めながらも興味深い、といった感じ。
イルフは赤い頬というより恍惚に酔いしれた表情。危ない顔だ。
ミーシャは無表情とは言わないまでもじっと見つめてくる。
「はい、一時間ほど前に」
「なんで起こしてくれないの!?」
「起こそうとしたわよ! ……一時間前に」
「一時間ずっと寝顔見てたの!?」
寝顔を一時間も見られていた恥ずかしさに僕は起き上がる。
「か、かわっ、可愛かったぞ……!」
「目の保養」
「……次からは早めに起こしてください」
その恥ずかしさを気取られないように顔を背けて言う。
「さて、それじゃあたし達は部屋に戻るわ」
「え」
今戻られるとイルフと二人きりの状況でご飯を食べたりお風呂に入ったりしないといけない。
できればいてほしいのが本音だ。
「あまり長居しすぎて、寝泊まり当番の時に来られたらたまったもんじゃないし」
それに頷くセシアとミーシャ。
まぁ、確かにと僕も納得してしまった。彼女達は寝泊まり当番の時を楽しみにしているようだったから。
「リトに変なことをしたら許さないぞ」
「こっそり精霊置いていこう」
「やめなさい」
僕とイルフは部屋を出ていく三人を見送る。
にっこりと笑顔で手を振るイルフ。扉が閉まる音がすると、彼女はそのままの表情で僕を見た。
「これで二人きりですね、リト様」
「は、はは……」
きっと僕は引きつった表情をしている。これから彼女の誘惑に耐えなければいけない。
そう考えると理性的にも大変だ。
「ふふ。さて、冗談はここまでにして夕食を摂りましょう。外で購入したものがあるので」
てっきり近づいてくるものだと思っていたがイルフはテーブルに向かう。
テーブルの上にはいくつか袋があって、イルフは中からプラスチックの器を取り出して並べていた。
「ブリテンでとても有名な料理みたいです。ちゃーはん? とぎょーざ? と呼ばれているみたいで」
イルフが箸、スプーンを用意してくれて僕は席に座る。イルフも向かいの席に座った。
「すごい良い匂いだね」
良い匂いだ。ちゃーはんとぎょーざという料理名は聞いたことはないけど、美味しいのは伝わってくる。