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人智帝国ブリテン -1-


「あ~~っ、もう! どこも宿取らせてくれないじゃない!」


 ガラガラガラと車輪が回る音の中、リンが急に立ち上がって騒ぐ。


 僕達は人運びリーボという移動手段で人智帝国ブリテンに向かっていた。


「ちょ、お客さん! 叫ばれるとリーボが——」

「リーボに謝っておきなさい!」

「えぇ!?」


 リーボというのは二メートルほどある二本足に羽を持つ鳥に似た生物で、従順な性格と筋肉質な体から人運びに最適だ。


 人運びリーボとして有名で、とても可愛らしい。


「リーボが可哀想だ」

「そうです、リーボさんを驚かせないでください」

「生物虐待、反対」

「誰のせいでこうなってると思ってるのよ!?」


 リンを含めて皆では? と言う疑問は口にしない。とばっちりがきそうだから。


 それからニ十分ほどして人智帝国ブリテンの城門が間近に迫ってきた頃。


 リンがキラキラとした表情で唐突に立ち上がってガッツポーズを取る。


「宿取れたわ! 本当に助かったぁ……!」


「さすがリンだ」

「ありがとうございます」

「わーいわーい」


 これにはさすがの皆も拍手。


 皆も宿が取れない理由をしっかり把握してるからこそ、宿を取ってくれることには本当にありがたさを感じているのだろう。


「ありがとうね、リン」


「へ……っ、べ、別にあたしが野宿嫌だからやっただけよ!」


 腕を組んでそっぽを向きながら言うリン。


 こうやって褒めると顔を赤くしながらツンとするのがリンの特徴だ。


「じゃあ人智帝国ブリテンに入りまっせ」


 リーボの手綱たづなを握る男性が言うと、門番に話しかけてしばらく、門が開き始める。


 城門をくぐってすぐ出迎えたのは大勢の歓声だった。


「セシア様ーー!!」

「あなたのおかげで剣が素晴らしいものだと思えた!」

「ありがとう!!」


「リン様ーー!!」

「世界で二人しかいない大魔法士シェトラだってさ!」

「カッコイイぞー!!」


「イルフ様ーー!!」

「数年前にあった異端国家アルトスの内乱で治療してくれたこと、ありがとうー!」

「命の恩人だ!!」


「ミーシャ様ーー!!」

「あなたが要所国に召喚精霊を置いてくれているおかげで安泰だ!」

「召喚精霊にもお礼を言っておいてくれー!!」


 とまぁ、屋根やカーテンで仕切られていて姿が見えなくても大歓声。


 これが彼女達に対する世界からの評価だ。


 すると四人は両サイドの扉から順番に顔を出し、手を振る。それはもう耳が痛いほどの歓喜の声。


「少し恥ずかしいな」


 扉を閉めて鼻の下に指をあてながら言うセシア。


「ファンサよファンサ」

「歓声は悪い気しませんしね」

「……」


 どさくさに紛れてミーシャが僕の膝に触れてすりすりしてくる。


「コラッ」


 一瞬で気づいたリンが手をはたく。さすが五感強化。



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