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エピローグ -1-



 Ⅲ



 リトとユザミが決別して十日後。


 人智帝国ブリテンの王城中、玉座の間にアシュテルゼン・リ・ブリテンはいた。


 豪華なシャンデリアに触り心地の良い赤いカーペットが玉座から入口の門まで続いている。煌びやかな装飾が施された玉座の前、アシュテルゼン国王は立ち尽くしていた。


 周りに近衛兵はいない。それどころか玉座の間にアシュテルゼン国王以外の人影はなかった。リトと面会した時でさえ廊下に近衛兵は待機していたことからも分かるように、それは異質なことだ。


 アシュテルゼン国王は寂しげな表情で玉座に座った。


「……ふう」


 一息吐く。未だ寂しげな表情は変わらずも、玉座の座り心地の良さを確かめるように身を任せた。


 すると玉座の間の門が開かれる。中から入ってきたのは、リトが王城を訪れた二回共、客室まで案内をした使用人。


 彼女は数百人いる使用人を統括するメイド長。アシュテルゼン国王直属の使用人でもあり、側近の一人。


「これで良かったのですか、アシュテルゼン様」


 アシュテルゼン国王は言葉を返さず、ゆっくりと頷いた。


「……今日はユザミ・テトライアの処刑日ですね」


 大量猟奇殺人犯の身柄が確保されたと国民に報知されたのは、リトとユザミが決別した当日。


 人智帝国ブリテンのありとあらゆる情報伝達手段で報知されたが、内容は国民の顰蹙ひんしゅくを買う内容だった。


 本来なら報知されるはずの容姿や氏名などの情報が一切明かされず、さらには公開処刑ではなかった。処刑は、王城地下にある処刑場にて行われるという内容に納得する国民はいなかった。


 しかしアシュテルゼン国王の行いや政治は普段から国民に寄り添うものであったことから、募った不満が行動に表れることはなかった。


 報知していたのは処刑日も然り。そして、今日がその日だ。


「——本来ならば」


 メイド長は意味深な言葉を残す。


 アシュテルゼン国王はやはり言葉を返さず、今度は天を仰ぐ。


「結局、私は彼女達に運命を託してしまうのだな」


 彼女達とは、遥か遠い過去に恋した女性とユザミのこと。二人は共に忌み嫌われたスキルを有しているという共通点がある。


「いずれ、スキルの存在が公然となる日が来るだろう。その日の為に、スキルを持つ人間を減らすわけにはいかなかったのだ」


 それは彼だけが知る、スキルという存在の本当の意味。


 それが明らかになる日がくることを、アシュテルゼン国王は確信していた。



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