問答 -2-
「リトが救いたかったのは、自分自身だよ」
ユザミは続ける。
「私が救われなかったら、自分が救われてはいけないことになってしまうから」
ユザミは続ける。
「私を救わないと、誰かに自分を救ってもらえない気がしたから」
ユザミは歩を進め、リトの前に立つ。
「スキルのせいにするしかなかった。そうしないと、心が壊れてしまうから」
ユザミはリトの胸に手を置いた。
心臓が止まっているのではないかと思うほど、鼓動が遅い。罪悪感が命を蝕んで、離さない。
「リトは今までずっと……それを感じ取りながら、生きてきたんだね」
スキルに苦しんでいるという共通点を持っていても、辿ってきた過去は違う。
リトは多くの女性を惚れさせてしまい、人生を狂わせてしまった。ユザミは抑えられない殺人衝動を抱き、命を奪ってしまった。
ユザミの言うそれとは——人生を狂わせてしまった人物が今も尚、スキルの影響で自分に好意を寄せているということ。
自分が犯してしまった罪を目の前で感じ取り、生きていかなければならない。
果たしてそれがどれほど辛いことなのか、分かる者はいない。
「どうしようもないんだ」
掠れて、耳を澄ませていなければ届かないほど小さい声。呟くという表現が正しいその声を、ユザミはしっかりと聞き取っていた。
「皆の人生を背負うには、僕はあまりにもちっぽけで、弱くて、何もできなくて……ッ」
取り繕っていた心が瓦解する。
「僕が出会わなければ……皆は幸せな人生を歩んでいたんだ」
抑え込んできた感情が溢れかえる。
「好きなことをして、好きな人と出会って、幸せになっていたかもしれないのに!!」
それはもう無くなってしまった未来の話。リトの心は、その面影に囚われている。
ユザミは小さく一息吐いた後に一歩引いて、リトを見据える。
「幸せって、何?」
"幸せ"。人によって答えの異なるそれを問う。
「セシアさんの幸せ、リンさんの幸せ、イルフさんの幸せ、ミーシャさんの幸せ——それぞれ違う幸せの形がある。それって、何?」
リトは答えることができなかった。
ユザミが言うように、幸せにはそれぞれ違う形がある。聞かれたとしても、それを知り得る術はない。
「答えられない。分からない。……当たり前だよ。だって、リトは彼女達を分かろうとしないから」
ユザミは続ける。
「……リトが知らないうちにね、皆と話したんだ」
リトはそれに驚いた表情を露わにしながらも思い当たる節があった。
アシュテルゼン国王に面会を希望する手紙を送る為、フェンデルと話していた時間。思えば、ユザミが積極的に接してくるようになったのはそこからだ。
それ以外なら——セシア達と軋轢が生じた日から二日間。
リトは考えるのをやめる。話した時ではなく、話した内容の方が遥かに重要だ。




