最後の約束 -1-
Ⅲ
「はぁっ、はぁっ」
——走る。
「はぁ……っ、はぁっ!!」
————走る。
「はぁ、はぁ……っ、ゲホッ」
——————走る。
賑わいを見せる人智帝国ブリテンの中央通り、苦痛と焦燥に顔を歪めながら、リト・アーネルは走る。
頭の中にユザミ・テトライア以外のことなど無かった。今までずっと心に影を落としていたスキルのことも、自分を愛してくれている四人のことも頭に無い。
彼は一心不乱に目的地へと向かう。
「はぁ、はぁっ、……くっ!!」
手紙の内容は簡単だった。中身には、
『王城の前で待っています』と、ただ一文だけ。
その一文が何を意味するのか、リトはすぐに理解していた。
「はぁ……っ、はぁっ!!」
道中、何度も通行人と衝突した。呼び止められても立ち止まることはなく、腕を引かれても振り払った。一瞥することもなく、意に留めることもなかった。
彼は眼帯を付けていない。左目も閉じていない。腰にあるポーチに黒と白の眼帯が入っていても、スキルのことを考慮する余裕は無かった。
それでもスキルが発動していないのは視線を合わせていないから。ただひたすらに視線を向けていたのは王城のみ。
「はぁっ、ゲホ……ッ」
やがて王城に繋がる城門に辿り着く。
閉まっている城門の前に門番が二人。走って向かってきているリトに気付き、手に持っている槍を威嚇で前に突き出す。
「止まれ! 貴様、名を——」
「リト・アーネルだ! 今すぐ門を開けろッ!!」
突き出された槍に怯むことなく門番に掴みかかるリト。門番は一瞬その勢いに圧倒されつつも、リトの名前を聞いてハッとした表情をする。
「門を開けろーッ!! リト・アーネルだ!!」
片方の門番がリトを押さえ、もう片方の門番が大声で開門を伝える。
しばらくして門が開き始めると共に、リトは門番を振り切って門の中へ足を踏み入れた。




