最後の想い -5-
「今日がリトといれる最後の日なのに、私は——」
「ユザミ」
言葉を遮って、頬を流れる涙を拭う。
ここ数日の出来事がユザミの心にどれだけ負担をかけていたか理解した。もちろん彼女が原因じゃないといえば嘘になるし、そう言うつもりはない。
だけど、勘違いしていることがある。それは伝えないといけない。
「ユザミを救いたいと思ったことに、後悔してないよ」
心の底から本音で話すのは、これが二度目だ。
「その為に手放したものもある。これから背負わなければならない罪もある。でも——」
拭いきれず、涙が僕の頬へと零れ落ちる。僕は小さく笑うと、ユザミの顔はさらに歪んだ。
「——でも、ユザミも背負ってくれる。一人じゃないから、大丈夫」
「——っ」
「それに、今日が最後じゃないよ。一週間後にはまた会える」
ユザミの表情は——何か言いたさそうにしているのを必死に抑えている感じがした。それに違和感を覚えていると、ユザミは無理に笑顔を見せた。
「笑っ、て」
突然の言葉に呆気に取られる。言葉の意味を理解して、笑ってみせた。
「ありが、とう……っ」
きっと全てに納得したわけじゃないし、安心しきったわけでもないだろう。
ユザミが抱えているものは大きすぎる。どれだけ僕が言葉で大丈夫だと伝えたとしても、不安を拭い切れるほどの安心感を与えることができない。
だけど、彼女は僕に頼ってくれた。一緒に生きてくれると言った。それは僕の決意が伝わっているという意味だ。
それなら、後は行動で示すのみ。生きていていい、と。幸せを求めていい、と。彼女がそう思えるように、できることをやるだけだ。
僕達は体勢を立て直し、抱き合う。
僕は遺族方の赦しを得ること。ユザミは罪を背負うこと。互いに覚悟を決めて、これから共に生きていかなければならない。
背負う罪はあまりにも大きい。それでも。
——それでも、二人なら背負っていける。
僕達はさらに強く抱きしめ合い、互いの存在を確かめ合うように……眠りについた。
次の日、ユザミの姿は無かった。
部屋に残されていたのは——
テーブルの上に置かれた一枚の手紙と、
大切にしていた、白い眼帯だった。




