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最後の想い -4-


 お風呂の後、就寝の話になるのは当然のことだった。


 ユザミが風呂を済ませている間、ドライヤーで髪を乾かし終え、ベッドに横向きで寝転がりながら明日のことを考えていた。


 気づけばかなり時間が過ぎていたようで、ユザミはいつの間にか風呂を済ませ、髪を乾かし終えていた。時刻は大体二十二時半。


「一緒に寝ていい?」


 仰向けに寝転がっている僕の顔を覗き込むユザミ。


 寝ていい? と聞かれると、答えを返すのが難しい。


 普段からセシア達の誘惑は断っている。それはお風呂を一緒に入ることもそうだし、一緒のベッドで寝ることもそうだ。理由はスキルの影響を受けて生じている感情を受け入れることはできないから。


 そう考えるとユザミの誘いも同じ条件だ。だけど、ユザミの場合は僕と共にいることで精神的安定を得ることができる。


 僕の隣だと街行く人がお義兄にいさんの顔に見えなかったり、殺人衝動を抑えられたり。いずれ僕の隣じゃなくてもそうならないようにしないといけないから、精神的安定になるなら、と思ってしまう。


「よい、しょと」


「え゛——っ!?」


 返事を待たず、馬乗り。反射的に上体を起こす。


「おっ、とと」


「——っ!?」


 ぼよん、とユザミの豊満な胸に押し返され、寝転がる。


 上体を起こしたこともあるが、一番は僕が太腿を上げたことでユザミが前傾姿勢になり、押し返された。


 太腿を上げたのも反射的で、理由は股間元に座られたから。あのままでいたら反応して膨張し、察せられていてしまったと思う。


 そのまま倒れ込まないように両手をベッドについていたユザミと目が合うと、微笑んでいた。


「難しい顔じゃなくなったね」


「……っ」


 どうやら顔に出てしまっていたみたいだ。質問に答えるまで空白の時間があったし、深く考えていたせいで表情にまで気を回せなかった。


「リトにはもっと笑ってほしいの」


 その言葉で気遣われているのは僕だと気づいた。


 確かに最近の僕は難しい顔ばかりしていたはずだ。それはこれから先のことを考えて決意を固めていたからで、共に過ごしているユザミが気づかないわけがない。


 もっと気を遣うべきだった。僕が一番に考えなければいけないのは、彼女に不安を感じさせないことなのに。


「なのに、私はリトの為に何もしてあげることができない。リトから色んなものを奪ってしまってばかりで、何も与えてあげることができてない」


 微笑んでいたはずの表情がほころびを見せ、次第に歪んでいく。


「リトは私といるべきじゃないのに……他の皆と離れさせてまで、私は……っ」


 それは伝えるべきではないと思って、伝えていなかったこと。


 気づかれているかもしれないとは思っていた。僕が明らかに他の皆と一緒にいる時間が少なくなったこともそうだし、セシア達と決別した日の怒号も届いていたはずだ。


 今でも伝えることではなかったと確信している。だけど、ここまでユザミが心を痛めていたとは思っていなかった。



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