最後の想い -3-
「せ、せめて小さいタオルを取ってくれませんか」
「敬語でお願いしても取らないよ」
「——っ」
間違いと比喩された行動を了承する言葉に、局部を隠すタオルでさえ取ってくれない。その二つで一緒に風呂に入る以上のことを想像してしまい、鼓動が速まる。
「で、出るっていったら……どうする?」
「出さない」
僕は落ち着かせる為に大きく息を吐く。
覚悟しないとダメだ。ユザミは言葉にしている通り、僕がお風呂から出ることを許さないだろう。
一つ良い方向に考えられるのは、間違いを起こすかどうかは僕次第という言葉。
裏を返せば、ユザミから間違いを起きるようなことはしないという意味になる。それなら、僕は間違いを起こさなければいい。
「私が洗うね」
「——っ」
そう言って僕の肩に手を置きながら左前にあるシャンプーを手に取った。
僕は心を落ち着かせながら、されるがまま頭を洗われる。
「目、瞑っててね」
シャンプーの泡は洗い流され、僕は目を開ける。
誘惑的な行動があるとしても、間違いを起こすような行動はされないと分かっていればある程度落ち着いて対応できる。
僕は情欲に抑え込めばいいだけだ。
「……話していいよ」
「……っ」
その言葉に、僕は驚きを隠せなかった。
話すことがある旨は伝えていない。にも関わらず僕が何か話すべきことがあると理解しているということは、諸々に気付きかけているということ。
おかしい、と断言されるほどのことはしていない。だからユザミは僕が何をしようとしているか知らないはずだ。
はぐらかすことはできる。でも、それは本当にはぐらかすべきことなのか。
伝えるべきではないことは分かっている。伝えないにしても、話を聞こうとしている彼女に対して嘘を吐くべきではないと思った。
「明日から用事があるんだ」
シャワーを止めて僕は呟くように伝えた。
「一週間くらい……ユザミが罪に問われないよう、努力をしてみる」
「十四人も手に掛けてしまったのに、無罪なんて無理だよ」
「難しいけど……できるかもしれないんだ」
「……どうやって?」
方法を教えることはできない。教えたら、ユザミは僕を止めるだろうから。
その沈黙を教えられないという意味で受け取ってくれたのか、ユザミは僕の背中に触れた。
「伝えられないようなことを、するんだね」
嘘は吐かないと決めた。ただ頷くこともしない。
それらがもう既に動きを持っていることをユザミは理解してくれる。だから止めるようなこともしなかった。
「……ありがとう」
その一言の後、僕達は喋ることはなかった。
誘惑する行動もなく、僕は背中を洗ってもらって他は自分で洗う。僕が全部終わった後、ユザミは自分でやるからと言って、僕は風呂を後にした。




