最後の想い -2-
「……ん?」
ふと背後から音がしたような気がして浴室の扉を見る。
浴室と脱衣所を繋ぐ扉は樹脂パネル。半透明になっていて扉の先で何か動きがあれば認識することができる、のだが。
「……」
やっぱり、何か動いている。としたら、それは。
「ゆ、ユザ——」
シャワーを止めて振り返りながら名前を呼ぼうとした瞬間、ガララ、と樹脂パネルの扉が開かれた。
「……」
「……」
目が合う、前に。衝撃的な体に視線が釘付けになる。
全体的に華奢だが幼さを感じさせず、大人びていて魅惑的な体。小さいものも含めれば数えきれないほど傷があるが、それでも色っぽさが勝る。
息を呑むほど存在感のある大きい胸。隠すにはバスタオルでも厳しいのか、締め付けられて変形しているのが、さらに官能的な欲望を刺激する。
「あ、ごめ、ん……?」
自分でも分かるほど凝視してしまって思わず謝る、と同時に、なんで謝ってるんだ? と正気に戻る。
僕はすぐに背を向けて椅子に座り、股間を隠した。
「ゆ、ユザミ?」
なんて声をかければいいか分からず、名前を呼ぶ。
ユザミは僕が風呂に入ってることを知っているし、何か急用を伝えに——いや、それなら服を脱いでバスタオル一枚で立っていることがおかしい。
そもそもバスタオル一枚の時点で察しているはずなのに、未だに何か理由をつけようと考えている。
「なに?」
「な、なに、じゃなくて……閉めてもらえる?」
「分かった」
背中越しにでも分かる。ユザミは浴室に入ってから扉を閉めた。
「そ、そうじゃなくて! な、なんで入ってきてるの!?」
ようやく思考と行動が結びついて、頭の中に浮かんでいた疑問を口にする。
ユザミは一緒にお風呂に入ろうとしてこういう行動に出ている。何かの間違いだと信じ込もうとしていたせいで、疑問をぶつけるのが遅くなってしまった。
その時点で手遅れ。今からユザミを追い出そうにも、出ていくとは思えない。
「一緒に寝たから、今度は一緒にお風呂に入ろうと思って」
悪気の無い声。一緒に入ろうと思っている時点で、浴室に入れた以上すんなり出ていくとは思えない。
ま、まさか僕に風呂を急かしたのもこれが目的か? 最初からこれが目当てだったなら、この先に何かしようと考えている可能性も——。
「さすがにそれは——」
「ダメじゃないよ。間違いなんて起きないでしょ?」
僕の言葉を遮って、ユザミは浴室の端に置かれていたもう一つの風呂椅子を動かして僕の後ろに座る。
「間違いを起こすかどうかはリト次第だけどね」
この人は、なんてこと。
間違いを起こすかどうかは僕次第ということは、僕が行動に起こせばそれは受け入れられるということで。遠回しに聞こえても、了承の返事であることは間違いない。




